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2019.09.10更新

 

オメガ3系脂肪酸といえば、DHA(ドコサヘキサエン酸)やEPA(エイコサペンタエン酸)、アルファリノレン酸がありますが、「集中力に良い」「血液をサラサラにしてくれる」「アレルギー症状を緩和する」など、よく耳にするかと思います。

栄養療法では不安症状の改善効果を期待して、うつ、不安神経症などの心のお悩みがある方に処方されることも多いようです。

今回は「オメガ3系脂肪酸の抗不安効果」ということで、昨年発表された面白い研究をご紹介させて頂きます。

 

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「オメガ3系脂肪酸の摂取による不安症状の軽減をメタアナリシスで確認」

 

国立研究開発法人国立がん研究センター、健康研究センター健康支援研究部をはじめとする共同研究グループは、青魚等に含まれるオメガ3系脂肪酸の抗不安効果を合計2,240人の不安症状を抱える人を対象とした19件の臨床研究をメタアナリシスで検討しました。

※メタアナリシスとは、複数のランダム化比較試験によるエビデンスを統合し、関心のある治療薬・ケア・対策の効果の大きさを評価し、より高い見地から正しい結論を導き出す解析方法。

 

■研究背景

不安は最も一般的にみられる精神症状であり、おおよそ3人に1人が生涯において何らかの不安症と診断されています。不安は生活の質や社会機能を低下させ、全死亡率を上昇させることにつながります。 がん患者さんにおいても、約半数のがんサバイバーが中等度以上の、7%が重度のがん再発不安を抱えていることが様々な研究で示されており、サバイバーシップにおける未だ満たされていないニーズの一つであることが指摘されています。不安症の治療法には選択的セロトニン再取り込み阻害薬や認知行動療法が用いられますが、前者は鎮静や依存などの副作用が懸念され、後者は治療にかかる時間、費用、そして治療者不足が課題となっています。身体疾患を抱える人の不安を和らげるための科学的根拠に基づく安全で簡便な対策が求められています。

近年、イワシ・サバ・サンマなど青魚に多く含まれるオメガ3系脂肪酸と不安の関連を調べる研究が多数行われ、オメガ3系脂肪酸の抗不安効果の検討が関心を集めています。マウスでの実験においても、オメガ3系脂肪酸の比率が高い餌を習慣的に食べさせると、恐怖体験について思い出したときの怖いという感覚(恐怖記憶と呼ぶ)が和らぐことが見出されています。しかし、これまで報告された臨床研究はサンプル数が少なく、研究によって結果のばらつきが大きく、オメガ3系脂肪酸が不安症状の軽減に効果があるかどうかについて明らかではありませんでした。

 

■解析対象

研究参加者:健常者、精神疾患患者、身体疾患患者

【臨床診断】

・精神:注意欠陥・多動性障害(ADHD)、境界性人格、トゥレット症候群、物質依存、
    アルツハイマー病、うつ病、強迫症、心的外傷後ストレス障害(PTSD)
・身体:事故外傷、パーキンソン病、急性心筋梗塞、月経前症候群
・健常:看護師、成人、非喫煙者、高齢者、大学生

【背景】

・オメガ3系脂肪酸摂取群(1,203名、平均年齢 43.7歳、女性 55%)
・オメガ3系脂肪酸摂取量 平均1,605.7mg/d(225mg–4074mg)
・オメガ3系脂肪酸非摂取群(1,037名、平均年齢 40.6歳、女性 55%)

 

■研究結果

メタアナリシスの結果、オメガ3系脂肪酸を摂取した群はオメガ3系脂肪酸を摂取していない群と比較して、不安症状が軽減されることが明らかになりました。また層別化した解析の結果、身体疾患や精神疾患等の臨床診断を抱えている人を対象にした場合に抗不安効果が大きいことが示されました。更にオメガ3系脂肪酸を少なくとも2,000mg摂取してもらった場合に抗不安効果を認めることが示されました。

 

 

引用・転載:国立がん研究センター(がんサバイバーの再発不安を軽減する研究などへの応用を期待 オメガ3系脂肪酸の摂取による不安症状の軽減をメタアナリシスで確認)

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以上、本研究成果は、9月14日付けで米国医師会雑誌(JAMA)系列のオープンアクセスジャーナル『JAMA Network Open』へも掲載されたようです。

 

日頃、魚不足が気になる方は多いのではないでしょうか?

アレルギーや血液検査の数値が気になる方はもちろんですが、ストレスが強い方、不安になりやすい方、または脳の老化予防に・・・今一度、オメガ3系脂肪酸の摂取量を見直してみてはいかがでしょうか。

 

投稿者: 予防医学・代替医療振興協会

2019.08.01更新


パンや麺類、お菓子等の小麦製品に含まれるタンパク質「グルテン」について、腸管機能や神経機能に与える様々な影響が懸念されていますが、近年では健康な方でもグルテンの不耐性の検査を受けたり、食生活で小麦製品の摂り方に気を付ける方が増えてきました。

 

今回は、昨年にデンマーク・バルトリン研究所のKnud Josefsen氏らによって報告された、妊娠中のグルテン摂取と子どもの1型糖尿病リスクの関係についての研究をご紹介します。

 

この研究では、1996~2002年にデンマークの全国出生コホートに登録された妊婦6万3,529人(妊娠は6万7,565件)とその子どもを、2016年まで平均で15.6年間追跡調査しました。そして妊婦のグルテン摂取量を妊娠25週の時点で実施した食物摂取頻度調査票の結果から評価したところ、妊娠中にグルテン含有量の高い食品を多く摂取すると、生まれた子どもが1型糖尿病を発症するリスクが上昇する可能性があることが明らかになりました。

 

結果の要約は以下の通りとなります。

 

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■妊婦のグルテン摂取量は1日当たり平均13.0gであった。

■追跡期間中に247人の子どもが1型糖尿病を発症した。解析の結果、妊娠中の母親のグルテン摂取量が多いほど子どもの1型糖尿病リスクは増加することが分かった。母親のグルテン摂取量が1日に10g増えるごとに、子どもの1型糖尿病リスクは1.31倍に増加した。また、母親のグルテン摂取量が1日20g以上と最も多かった群では、1日7g未満と最も少なかった群に比べて、子どもの1型糖尿病リスクは2倍であった。尚、この研究は、母親の妊娠時年齢やBMI、総摂取カロリー、喫煙の有無など、潜在的に影響を及ぼす種々の因子を調整して解析している。

 

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これらの結果を踏まえて、Josefsen氏は「妊娠中の食生活を少し変えるだけで、子どもの1型糖尿病リスクを低減できる可能性が示唆された」と述べています。ただ、観察研究であるため因果関係が証明されたわけではなく、今後さらに検討を重ねる必要があると強調しています。

また、付随論説の著者の一人でフィンランド国立健康福祉研究所のMaija Miettinen氏は、母親が妊娠中にグルテンを多く含む食品を摂取する習慣があれば、子どもにもこうした食品を食べさせている可能性があるため、「母親のグルテン摂取と子どもの1型糖尿病リスクとの関連が、母親の胎内にいるうちにグルテンに曝露した結果なのか、幼少期の食生活の結果であるのか、あるいはその双方が関連しているのかは明らかになっていない」と付け加えています。

 

参考・引用:Care Net「妊娠中のグルテン摂取過多で児の1型糖尿病リスク増」/LINKDEDIET「妊娠中の高グルテン食は子供の糖尿病リスクの上昇につながる!?」

 

グルテンと子どもの発達についてはまだ研究段階で明らかになってないことも多いですが、栄養療法を取り組んでいる医療機関では子どもの発達障害やアレルギー、代謝異常等がグルテン摂取量を調整することで改善した例は多く挙げられています。

1型糖尿病との関連についてもこれから益々研究が進み、症例も多く得られるようになるかと思いますが、これまで予防が難しいとされていた1型糖尿病が防げる時代がくるかもしれませんね。

 

投稿者: 予防医学・代替医療振興協会

2019.07.25更新

 

前回に引き続き、「カンジダ菌による健康問題から身体を守るための方法」についてご紹介させて頂きます。

 

▶▶前回分をまだ見てない方はこちら

 

 

▼カンジダ菌が体内に与える影響

カンジダ菌の異常な増殖や菌糸体への変化は、様々な不調を引き起こします。

免疫系 花粉症、アレルギー、関節性リウマチ、かゆみなどの炎症反応等

消化器系 胃炎、下痢、食道炎、便秘、潰瘍性大腸炎、クローン病等

その他 味覚異常、舌痛症、気分の落ち込み、不眠、月経異常等

 

 

▼カンジダ菌との付き合い方

カンジダ菌は一生付き合っていく菌です。菌を増やしすぎず、組織侵襲性を示さない「酵母型」に変化させることが大切です。

 

【カンジダ菌とうまく付き合うための食事】

GOOD!

・新鮮な生野菜(カンジダ菌の菌糸化を抑制)

・海藻やきのこ類(腸内環境を整える)

・乳酸菌を含む発酵食品(腸内環境を整える)

・シナモンやバジル等のハーブ(解毒・抗菌作用)

・ニンニク、ショウガ等の香味野菜(解毒・抗菌作用)

NG…!

 ブドウ糖やショ糖など、砂糖を多く含む食べ物(カンジダ菌を増殖させ、菌糸化を促進させる)

 

【カンジダ菌を増やさないための生活習慣】

・抗生物質は腸内の常在菌を破壊してしまうので、長期での服用は控えましょう。

・免疫力が低下すると、常在菌とのバランスが崩れ、カンジダ菌が増殖しやすくなります。免疫細胞が多く存在する腸内環境を整えましょう。

 

 

▼栄養療法で利用される、カンジダ菌対策サプリメント

オリーブリーフ

天然の抗生物質オリーブリーフ。増えすぎてしまったカンジダ菌がもちろん、腸内の悪玉菌の除去にもおすすめです。

バイオジェニックス

免疫は腸内環境と密接な関係があります。腸内環境を整えることで、カンジダ菌が優位になるのを予防します。

 

投稿者: 予防医学・代替医療振興協会

2019.07.19更新

 

食生活の変化、長寿化などが原因で問題視されはじめた酵母:カンジダ菌をご存知でしょうか。今回は、

「カンジダ菌とはどのようなものか?」

「カンジダ菌による健康問題から身体を守るための方法」

について、前編・後編の2回に分けてご紹介します。

 

▼身近な酵母・カンジダ菌

酵母は、みそ・しょうゆなどの発酵食品を作るものとして、古くから親しまれてきました。酵母には様々な種類が存在しますが、世界中の人の口から腸までの消化管や膣、皮膚などから検出できると言われている「カンジダ菌」をご存知でしょうか。カンジダ菌は、分娩時や授乳時に赤ちゃんの体内に入り込み、その後も常在菌として生き続けますが、近年では食生活の変化や高齢化によって、カンジダ菌が病原菌として注目されるようになっています。

 

▼カンジダ菌・体内での働き

通常カンジダ菌は「酵母型」という形で体内に存在します。人の免疫細胞を刺激し、細胞性免疫を強める働きをしており、本来は健康上の被害を与えるものではありません。しかし、加齢や生活習慣などが要因となって「菌糸型」に形態を変化させてしまうことで、炎症や免疫・消化管の不調などの健康被害を引き起こしています。

Candida

 

▼こんな人は要注意!簡易チェックリスト

☐ 日常的に糖質や、砂糖を多く含む食品の摂取が多い

☐ 食後、頭が働かない・ぼーっとすることがある

☐ 皮膚に原因不明のかゆみがある

☐ やる気が起こらず、疲労感が抜けない

☐ 過去に水虫や膣カンジダになったことがある

☐ 便秘や下痢などお通じの悩みがある

 

多くあてはまるほど、体内のカンジダ菌の多くが菌糸型に変化している可能性があります。カンジダ菌は完全には排除できませんので、上手に付き合うことが大切です。

 

 

「カンジダ菌による健康への影響<後編>」へつづく

 *次回は、カンジダ菌が体内に与える影響や、カンジダ菌との付き合い方について、ご紹介させて頂きます。

 

投稿者: 予防医学・代替医療振興協会

2019.07.12更新

 

今回で最後となりますが、前回に引き続き、ザ・フナイ(2019年6月号)「本物の探究者」特集で紹介された岡治道先生の記事をご紹介させて頂きます。

 

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■細胞膜栄養療法の実際<後編>

4.バイオジェニックスによる腸内細菌叢と免疫の改善

60兆個の細胞からなる人間の腸管内には100兆から600兆個もの腸内細菌が生息し、人に有益なビタミンや脂肪酸などの栄養素の提供、消化吸収の補助、便の形成、有害細菌侵入の防衛、そして免疫機能の調整などの重要な作用が認識され、良好な腸内環境を保つ意義が注視されています。

腸内環境の改善手段には、オリゴ糖などを投与して腸内細菌を活性化するプレバイオティクスや、ビフィズス菌を含む乳酸菌を腸に届けるプロバイオティクスが知られていますが「バイオジェニックス」はこれらとは異なり「直接、あるいは腸内フローラを介して免疫賦活、コレステロール低下作用、血圧降下作用、整腸作用、抗腫瘍効果、抗血栓、造血作用などの生体調節機能を発揮する食品成分」と定義され、微生物が生産したフラボノイド、生理活性ペプチド、免疫賦活物質、ビタミン、脂肪酸などを抽出・濃縮したものです。より効率的な腸内環境と「脳腸相関」の改善により、神経・内分泌系の円滑な機能発現が可能になると期待されています。

 

終わりに

生命科学の最大の目標は「人々が自信に満ちて楽しく健康で長生きできること」と言えます。

ライナス・ポーリング博士は、1960年代にメガビタミン療法を提唱しアメリカ人を熱狂させましたが、複数の臨床研究において最大摂取の有益性は必ずしも認められず、その後もビタミン療法に対する懐疑的な研究結果が発表されています。このような単純に「有益なものは大量に用いるのが良い」という発想は、食べものや栄養が与える影響を過大に評価する、フードファディズムという非科学的、集団催眠的そして商業活動的な主張のようにも見えます。私たちは栄養素の摂取は「必要なものを適量摂取してこその有益」と考えています。

栄養療法の臨床からは、①多くの栄養因子が健康に関わり、その何れも完全に失うことができず、また他を補完することができないこと②個々人の年齢や性別、運動量、基礎代謝、睡眠時間などが複雑に関与して栄養素の必要量を規定し、変動しているということ③体の持つ蓄積能力や代謝調節など種々の保全機能が破綻し、恒常性を逸脱した状態が不健康であることを学んでいます。

私たちの栄養療法は日進月歩の科学研究の中で、患者に寄り添いながら現実を注視し、ひたむきで継続的な栄養素の匙加減と日常の食生活の健全化による、細胞活性化と代謝改善を図ることによって、自身に満ち、楽しく健康で長生きできるという共通の目的を達成しようとしているものです。

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現代人の食問題、栄養療法における細胞膜機能の重要性を始め、予防医学の普及を願う当会としてもとても勉強させて頂ける記事でした。

①~⑤をまだご覧でない方は是非、①から読んでみて下さいね。

 

【岡医師、掲載記事のご紹介①~⑤】

①現代日本人の抱える「食の問題」<前編>

②現代日本人の抱える「食の問題」<後編>

③栄養学から栄養療法へ

④細胞膜栄養療法と背景

⑤細胞膜栄養療法の実際<前編>

 

投稿者: 予防医学・代替医療振興協会

2019.07.09更新


引き続き、ザ・フナイ(2019年6月号)「本物の探究者」特集で紹介された岡治道先生の記事をご紹介させて頂きます。

 

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■細胞膜栄養療法の実際<前編>

1.クリニックでの診療

細胞膜栄養療法はK・リゾレシチンと糖鎖栄養の投与による膜機能の改善と、腸内環境の整備による栄養素の吸収改善を先行または同時に、不足した栄養素を補充していきます。そのためには症状と経過、食事内容の聴取、診察、採血、PRA毛髪検査などにより栄養素の過不足を評価して治療計画を立て、出来るだけ食材から摂取するよう栄養指導や調理指導を行いますが、サプリメントを必要とする場合には使用経験に基づき有益性が確認されたものを提案します。通常一回の受診時間は、診察と栄養指導を含めて1時間程度になります。

臨床では総カロリー・糖質・脂質の過剰、ビタミンB群とタンパク質、鉄や亜鉛などのミネラル、ω3系脂肪酸、食物繊維の不足が多く、便秘など腸の不良も共通して認められます。通常は治療開始から3週間程度で、多くの方が改善の兆しを体感されます。

治療薬の減薬や中止の希望には、栄養療法による改善状態を導き出し、結果として減薬や断薬が可能となることを説明します。自己判断での断薬は重大な離脱症状を招くことがあります。症状改善に合わせて漸減させ、場合によっては他科の主治医の協力を得て減薬します。

 

2.基本サプリメントとしてのK・リゾレシチン

細胞膜栄養療法の基本となるレシチンの摂取は、可能な限り自然界の存在様式に近い形が理想です。高純度で高濃度を大量に摂る方法では、効果が得られませんでした。クリニックではリゾ化されたレシチンに、フォスファチジルセリン、オリゴ糖(食物繊維)、吸収や利用を高める程度の複合的なビタミンを中心に構成された、食品そのものといえるような構成内容のサプリメント(K・リゾレシチン)を使用します。

リゾレシチンとはフォスファチジルコリンを形成する2本の疎水性脂肪酸のうちの一本を酵素で切断(リゾ化)したもので、更に特殊栄養素を加える(K・リゾレシチン)ことにより口腔粘膜からも急速に吸収され、脳血液関門を容易に透過できます。これは摂取後15分後で脳波上にα波が急速に出現し2時間以上にわたって持続する現象でとらえられ、脳代謝への即効性を示しています。α波の出現により、K・リゾレシチンが集中力を高めるなどの脳機能向上に有益と言われています。

 

3.糖鎖による活性賦活

糖鎖は生命に必須の構造ですが、加齢による減少や活性酸素・糖化現象による変性が機能低下を起こします。クリニックでは、ガラクトース、マンノースなどの8種類の糖鎖栄養素にマルチビタミンなどを付加した製品を、糖鎖機構の改善目的で使用します。これらが糖鎖形成の原材料となるかは生体内動態が不明で判断できませんが、糖鎖原料である種々の糖が同時に吸収されると糖鎖構造の広範囲の崩壊と判断し、細胞の糖鎖合成が全身的に活発化する可能性があります。

いずれにしても糖鎖栄養素は、臨床的には向上の体感を伴う不可欠な手段となっています。

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▶続きは、岡治道医師、掲載記事のご紹介⑥「細胞膜栄養療法の実際<後編>」

 

投稿者: 予防医学・代替医療振興協会

2019.07.05更新

 

引き続き、ザ・フナイ(2019年6月号)「本物の探究者」特集で紹介された岡治道先生の記事をご紹介させて頂きます。

 

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■細胞膜栄養療法と背景

1.細胞膜栄養療法の立脚点

細胞膜栄養療法は「生命の原点であり生命活動の源は細胞膜である」そして「細胞は人工的で過度に純粋化された物質を嫌う」ということに着目し、栄養状態の改善には先んじて細胞膜の健全化を行い、できる限り自然界の存在様式に近い形で栄養素を補完し、薬剤や合成栄養素を排除することで、効率よく細胞の機能を改善することがグランドデザインです。

開発者の神津健一博士は、40年前にレシチンと出合い、創意工夫を重ね、新型の「K・リゾレシチン」を開発し、細胞膜栄養療法を確立しました。そして神津博士は細胞膜栄養療法に特化した専門医療機関である「医療法人社団一友会ナチュラルクリニック代々木」を設立し開院したのは2004年、日本で初めての栄養療法に特化したクリニックです。

私は2017年以来、代替医療としての栄養療法を担当しています。当初は心療内科的な疾患が過半数でしたが、栄養療法の社会的認知に伴って認知症の予防や、アンチエイジング、疲労感の回復、妊娠希望など様々なニーズに対してご相談を受けています。

私たちが栄養療法を行う基本であり一次的条件は、「細胞膜の正常化」です。それは生命の起源を、リンを含んだ油、即ちリン脂質であるレシチン(フォスファチジルコリン)によるリン脂質二重膜構造を持った球体と考えるからです。この細胞膜を介して栄養素や代謝産物、情報のやり取りがスムーズに行われることが生命活動の基本ですから、何よりも先に細胞膜の状態を改善しなければ次に進めません。

 

2.リン脂質(レシチン)の多彩な機能

レシチンには細胞膜の基本構成物である以外にも、さまざまなタンパク質や脂質、抗原情報、遺伝子情報等の内容物を、リン脂質二重膜のコンテナ(エクソソーム)に収納し相手先となる細胞に直接物質を送り届ける機能があります。また神経接合部(シナプス)における神経伝達物質の移送(エンドソーム)と、シナプス間隙への放出にもレシチンが利用されます。さらに神経伝達物質アセチルコリンの合成には、レシチンが原料となります。レシチンによるアセチルコリンの合成、エンドソームの形成、内容物の放出と再生というサイクルの活性が低下・障害されるとアルツハイマー病が引き起こされます。

この様にレシチンは単に細胞膜の構成成分としてではなく、物質の細胞間移動による情報伝達など多彩で重要な機能を担っていることが分かります。

 

3.細胞膜の修飾因子

リン脂質二重膜構造自体は油の膜で柔らかく、一定の形を保つことができません。そこにコレステロールやタンパク成分が追加されることで、形態的安定性と強度が得られます。この膜タンパクはチャンネルとして刺激の伝達や物質の移動に関与しています。また細胞膜内に練り込まれたビタミンEやプラズマローゲンなどは、代謝の過程で発生した活性酸素の一次的処理を担います。

また近年大きな注目を集めているのが「糖鎖」です。細胞内で作られる糖の連続した鎖状構造物で、細胞膜タンパク質や分泌タンパク質、リン脂質などは糖鎖と結合し、電子顕微鏡で見る細胞表面は糖鎖の毛玉のように覆われています。

糖鎖の機能としては、タンパク質の機能化・性質変換や情報提示(インデックス)機能、アンテナ機能などの働きがあります。糖鎖なしでは細胞膜やホルモン、酵素などの生体活性が得られず、生存できません。話題に上がる血液型やインフルエンザウイルスのH1N1型などは細胞膜上の糖鎖の提示する情報を表しています。

 

4.酸化とタンパク糖化反応による傷害

疾病や機能異常、老化のメカニズムとして活性酸素による酸化や、糖によるタンパク糖化反応が重大な影響を及ぼしていることが解明されてきました。ミトコンドリアのエネルギー産生に伴い発生する活性酸素はレシチンや脂肪酸、膜タンパク、糖鎖を酸化により変性させ機能を低下させます。同様に蛋白糖化反応によってタンパクの機能が棄損され、さらにAGEsはコラーゲンの変性や細胞内に炎症を起こし細胞死や臓器機能低下による老化や疾患を引き起こします。

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▶続きは、岡治道医師、掲載記事のご紹介⑤「細胞膜栄養療法の実際」

 

投稿者: 予防医学・代替医療振興協会

2019.07.03更新

 

引き続き、ザ・フナイ(2019年6月号)「本物の探究者」特集で紹介された岡治道先生の記事をご紹介させて頂きます。

 

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■栄養学から栄養療法へ

1.栄養と栄養素

栄養(英:nutrition)とは、「生物が外界から物質を摂取し代謝してエネルギーを得、またこれを同化して成長すること。または、その摂取する物質」(出典:広辞苑)と定義され、栄養の源になる物質を栄養素(英:nutrient)といい、身体における役割や機能、更に健康との関係が解明されてきました。

明治以前には「栄養」と「営養」が同じ意味として用いられ、日本栄養学の開祖と称される佐伯矩(さいきただす)博士が1918年(大正7年)、文部省に建言し「栄養」の表記に統一されました。博士は1914年に世界初の栄養学専門研究機関を設立し、1924年に世界初の栄養士養成施設を開設し卒業生を「栄養士」と称しました。1934年(昭和9年)、世界に先駆けて日本栄養学会を設立し栄養学を医学から独立させ、1947年(昭和22年)には国立栄養研究所が設置され「栄養士法」が公布されました。このように、日本は栄養学の先進国として世界に貢献してきたのです。

栄養学とは、「生命の維持及び心身の健康を保つために、栄養の状態や必要度について研究する学問」や「栄養学は食品成分と生体との相互作用に関する科学」などと説明されています。

 

2.栄養療法とは

栄養学による科学的根拠をもとに、治療や養生、健康増進や身体機能の維持・亢進を目的に行われているのが現代の栄養療法です。栄養・生化学辞典には、栄養療法とは「栄養素の補給量を是正して治療効果の改善をはかる療法。絶食(断食)、飢餓や減食(栄養制限)など栄養素の摂取量を制限する方法。不足している栄養素を補充する方法。および例えば特定のビタミンなどを所要量以上に供給する方法などがある」と記されていますが、この中には高カロリー輸液・経腸栄養、疾病に合わせて特定栄養素や食材を付加あるいは除去した食事、メガビタミン療法、分子整合栄養医学理論に基づく栄養素の補充療法、断食療法などの様々な取り組みが含まれています。

従って栄養療法を行う場合には「何を目的とし」、「どの様な効果を期待して」、「いかなるアプローチを行うか」を、理論的背景を理解して選択する必要があります。

 

3.栄養学の発展と歴史

ここで人類と栄養の歴史を再確認しておきます。健康と食事の関係は古く、5千年以上前の古代メソポタミア時代の、健康状態に合わせた楔文字のレシピ集が残っています。古代エジプトではニンニク、胡麻、ヨーグルトなどを健康維持や強壮目的に使用し、紀元前200年頃の「神農本草経(しんのうほんぞうきょう)」には植物・動物・鉱物の人体に作用する効果の強さや使用法が記載されています。

そして栄養への科学的アプローチの始まりは、フランス革命前の1773年、アントワーヌ・ラヴォアジエ(近代科学の父、生理学の始祖)の呼吸の発見であるといわれています。1814年脂肪が発見され、1820年から1941年までに必須アミノ酸9種類が同定されました。1842年にユストゥス・リービッヒが糖、脂質、タンパク質を三大栄養素と命名しました。

栄養素がどの様に働くのかを研究したのがクロード・ベルナールで、1865年に出版された「実践医学序論」の中で、摂取された栄養素の一連の科学的変化を「代謝」と命名しました。このほかにも自律神経と糖代謝、消化吸収の機能、神経毒の作用などを解明し、「生理学・栄養学分野のモーツァルト」と呼ばれていますが、彼の「医学は科学的考察に基づかなくてはならない」と提言したことは、後の近代医学の礎となる提言で、医療に関わるものは常に教訓として心すべきものです。

さて、1912年にフレデリック・ホプキンスが三大栄養素のみでは生命の維持は不可能で、食品には未知の重要な微量栄養素が含まれているとし、これが後にビタミンと呼ばれます。当時死亡者の多かった脚気の撲滅に期待が寄せられ、ビタミンの研究に各国がしのぎを削っていました。本邦での脚気の被害は甚大で、「江戸わずらい」などとも呼ばれていましたが明治の陸海軍では脚気による死亡者が続出し、日露戦争(1904~1905年)では陸軍参戦総兵員約108万8000人、脚気患者は25万人に達し、戦病死者3万7200余人中脚気による死亡者2万7800余人(約75%)で多くは脚気死によるものだったとされています。戦死者数を脚気死数がしのぐこととなりました。

そして1906年に鈴木梅太郎教授(東京帝国大学農学部)が玄米から抗脚気物質のオリザリンを抽出し脚気の原因究明に成功しました。これが世界初のビタミン抽出(1936年にロバート・ウイリアムズよりVitB1と命名される)となりました。余談ですが、世界に誇るこの偉業は同じ大学の医学部の陰謀により、ノーベル賞の受賞が阻止されたことが、ノーベル財団の資料に残されています。

1906年に始まったビタミンの探求は1912年にビタミンA、1922年にE、D、1928年にCが発見され、その後B2、B6、B3(ナイアシン)、B9(葉酸)、B12、Kが1953年までに同定され、前述の脚気はビタミンB1、壊血病はC、ペラグラはナイアシン(B3)、クル病はD、巨赤芽球性貧血はB12の欠乏で発症することが明らかとなりました。

その後、必須アミノ酸を摂ることにより、食事からたんぱく質を摂取しなくても体内での働きを維持できることが証明され、現在では腸管切除後でも三大栄養素、ビタミン、ミネラル、微量元素の持続点滴(IVH)により、20年以上の生存が可能となっています。これは理想的な健康状態とは言えないながらも、救えなかった命を救命できたという観点から、栄養学は一つの大きな目的を達成したといえます。

その後も、海藻などに含まれる「ミネラル」、野菜や果物に含まれる「フィトケミカル」、「脂肪酸」においては生理活性や重要性が研究され、健康や老化、疾患との関係に関するおびただしい発見がなされています。更には腸内細菌の状態と腸の機能が、身体・精神・免疫機能に影響を及ぼすことが判明し「脳腸相関」と言われるネットワークの存在が注目されています。これは栄養素やエネルギー代謝を超えた、生命内部のネットワークと生物活性物質の関係性という新たな研究分野の幕開けとなっています。

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▶続きは、岡治道医師、掲載記事のご紹介④「細胞膜栄養療法と背景」

 

投稿者: 予防医学・代替医療振興協会

2019.06.25更新

 

前回に引き続き、ザ・フナイ(2019年6月号)「本物の探究者」特集で紹介された岡治道先生の記事をご紹介させて頂きます。

 

▶前回分をまだ見てない方はこちら

 

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■現代日本人の抱える「食の問題」<後編>

4.肥満(飽食)と食の問題

日本国民は太平洋戦争後に高度の栄養不足に見舞われました。特に子供たちの栄養失調は深刻で、GHQ(連合国最高司令官総司令部)は脱脂粉乳と小麦を提供しました。その後、1970年代の経済成長に伴って、栄養状態は大幅に改善しました。

もともと沖縄県は、甘藷(サツマイモ)が主食で肥満が少ない県でした。ところがアメリカ合衆国の統治下となった戦後は、輸入食肉および肉加工食品が大量に導入されたことにより脂肪摂取比率が欧米化(30%超え)し、1972年の沖縄返還によりコメが一般化すると肥満人口割合が更に増加し、BMIは本土男性の平均に比較して2.0(kg/㎡)も高くなってしまいました。そして沖縄県の高齢者を除いた平均余命は急速に短縮し、長寿県第1位から大きく転落しました。

近年の先進諸国における飽食(過食)文化により、肥満者やメタボリックシンドローム、精神疾患や癌の増加が大きな社会問題となっています。人類が飢餓に対応すべく進化し続けた歴史に比べ、わずか50年から100年程度では栄養過剰に対応する機能が準備できないのでしょう。

「2018年、世界人口の11%に当たる8億1500万人が飢餓状態である」ことに、皆様と改めて思いをはせなければならないと思います。もう少し、食料や富、教育の機会や安全な生活環境の偏在が修正されるように、英知を結集していかなければなりません。

 

5.サプリメント(健康補助食品)と食の問題

サプリメントが全盛の今日ですが、皆様は何種類位、利用しておられますか。

2015年の内閣府が実施した「健康食品」利用に関する実態調査では、

 ①50歳代以上の約3割が健康食品をほぼ毎日利用。

 ②医療機関への受診等をすることなく、健康食品で不健康な状態を改善しようとした経験がある者は約4割。

 ③約5割の利用者が2種類以上のサプリメントを利用し、年齢が上がるほど多種類を併用する傾向がある。

 ④健康食品利用者のうち通院をしている者の約8割が、医薬品の処方を受けるにあたり医師等から健康食品の利用状況に関する確認を受けていない。

以上のことが判明しました。

この調査から、体調不良を栄養素不足ととらえ、食品からではなく特段の根拠もなくサプリを選択し、「薬ではないから安全」と誤った認識を持っている、更に医師もサプリの服用や栄養療法の重要性を認識していない、という実態が浮かび上がってきています。実際は、サプリでも過剰摂取による問題が指摘されています。特に治療薬の効果を激変させるものがあり、内服治療中の方はサプリメントの併用に慎重でなければなりません。生命にかかわる重大合併症も多数報告されているからです。

 

6.未病対策と食の問題

「体育智育才育は即ち食育なり」、この「食育」という言葉は、石塚左玄が1896年(明治29年)に造語し用いられています。1952年(昭和27年)施行された「栄養改善法」は、国民の栄養改善(特に栄養失調)を目的とし、2002年(平成14年)に「健康増進法」へと引き継がれました。この中で「我が国における急速な高齢化の進展及び疾病構造の変化に伴い、国民の健康への増進の重要性が著しく増大していること」を前提とし、国民の義務として「国民は、健康な生活習慣の重要性に対する関心と理解を深め、生涯にわたって、自らの健康状態を自覚するとともに、健康の増進に努めなければならない」、更に自治体や医療機関などに「健康増進事業」への協力義務を課しているなどの特徴があります。これによって検診事業、健康相談事業の充実、受動喫煙の防止、特定保健用食品(トクホ)制度などによる健康増進を政策的に行うとしています。

更に、2005年(平成17年)に「食育基本法」が制定されました。この法律の前文(趣旨)は実に格調高く、健康増進にご興味のある方にはご一読頂きたいと思います。現在は農林水産省が「健康で文化的な国民の生活と、豊かで活力のある社会の実現に寄与することを目的」として、食育の推進に関する施策の総合的かつ計画的な実施を担っており、食育の定義を「食育は、生きる上での基本であって、知育・徳育・体育の基礎となるものであり、様々な経験を通じて『食』に関する知識と『食』を選択する力を習得し、健全な食生活を実現することができる人間を育てることです」と明文化しています。この法律の意味するものは、食の問題は国家レベルで改善しなければならないところまで深刻化しているということです。適切な教育や社会活動によって栄養、食品、調理、生活習慣についての正しい知識を持ち、自らの食と健康に責任を持てるようインテリジェンスと技術を身に付けることが、未来への大きな資産となるのです。

また国民の健康に関するこれらの法律の変化は、法律が現況を鑑み変化するというダイナミズムを示しています。そして常に変更・改正が行われていることからも、国民の健康は単なる生命科学ではなく、社会学・法学・教育・産業などが相互協力の上でなされるものと実感します。

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▶続きは、岡治道医師、掲載記事のご紹介③「栄養学から栄養療法へ」

 

投稿者: 予防医学・代替医療振興協会

2019.06.21更新

 

学術委員の岡治道医師が、ザ・フナイ(2019年6月号)の「本物の探究者」特集で紹介されました。

日本人の抱える食問題や栄養療法について、分かりやすく掲載されている記事ですので、数回に分けてご紹介させて頂きます。

 

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「栄養療法の潮流と細胞膜栄養療法」

 岡 治道 先生

 ナチュラルクリニック代々木 医師/日本抗加齢医学会専門医・麻酔科票簿医・整形外科専門医・脊椎脊髄病医

 

■私と栄養療法の出合い

2015年、突然の体調不良により臓器移植手術を受け、一命をとりとめた私は、それまでの手術中心の外科系臨床医としての活動に終止符を打つこととなりました。最先端の医療技術により余命数カ月の死の淵から引き戻され、臓器提供者であった妻よりも早期に改善し、僅か2週間で退院できました。西洋医学の偉大さに心から感謝と敬意を感じた体験でした。

手術直後から強力な免疫抑制剤の服用と食事の制限、1年に及ぶ自宅療養を要しましたが、この貴重な体験と時間によって栄養療法と出合い、この出合いが最先端医療ですら軽視できない栄養の問題に取り組む決意を与えてくれたのでした。

 

■現代日本人の抱える「食の問題」<前編>

1.社会の効率化と食の問題

効率最優先の社会的風潮による家族形態や就労状態の変化は、食事事情にも大きな影響を及ぼしています。それは栄養への軽視と言えるかもしれません。

コンビニ弁当のメニューは華やかで簡便で、効率的に腹を満たしてくれます。ただ、炭水化物中心で、高カロリー、揚げ物などは酸化脂質を多量に含み、濃く甘辛い味付けで健康的とは思えません。また、サラダは食中毒予防を重視するがために、水溶性ビタミンを失うほどまで洗浄された野菜でできています。更に腐敗を防ぐために食品衛生法に適合する範囲の食品添加物が複数加えられているのも周知の通りです。もっとも食品添加物のすべてが悪というわけではありません。それでも複数を同時に使用した場合の許容量と安全性は証明されていませんし、解毒能力や排泄能力の弱いお子さんや高齢者は、思わぬ健康被害に遭う可能性があります。

さらに生産の効率化による、農薬や家畜の飼料に含まれる抗生物質やホルモン剤、食品添加物の使用、海洋・大気汚染など、食材自体の問題からは逃げられず、環境問題を含めて食の安全確保にも取組まなければなりません。

 

2.理想的な食文化とは

食事は、活力を生むためのエネルギー補給や、身体を育み維持するための栄養源の摂取が目的であり、同時に楽しみや喜びを分かち合うコミュニケーションの場として、極めて大切な文化的営みです。最近は和食と地中海食が健康に良いと言われていますが、菜食主義や低炭水化物食(ロカボ食)なども一部で支持されています。

ところで、健康的な「和食」とは何を指しているのでしょうか。

1970年代から日本は高度経済成長期を迎え、食事に対するカロリー量やタンパク量が格段に増加し栄養状態が改善されました。一方、1980年代のアメリカでは肥満と心血管障害の増加により、食事と健康問題が注目され、和食の持つ基本栄養素のバランスが理想的との研究結果に、世界的な和食ブームとなりました。しかし、残念ながら今の日本は洋食化が進み、日本人ですら「和食」がどの様な食事を指すのか分からないほどになっています。

 

3.炭水化物と健康被害

血糖値スパイクと低血糖症

最近になって和食が必ずしも良いとは言えない、との指摘があります。これは炭水化物の総摂取カロリーを占める割合が高く、白米やうどんなどを中心に食べると糖分の消化吸収が急速に進んで、血液中のブドウ糖量が爆発的に増える「血糖値スパイク(グルコース・スパイク)」が起きるからです。

血液中の糖は濃度が高くなるほどタンパク質と強く結合(タンパク糖化反応)し、タンパク質の立体構造を変え、機能を低下させます。糖化されたタンパクは、更に化学反応を受けてAGEs(最終糖化産物)となり強い毒性を持ち、酵素の働きを低下させたりコラーゲンなどを変性させたりすることで血管壁、皮膚、水晶体などにダメージを与え、動脈硬化や糖尿病、更には心筋梗塞や白内障、脳卒中、アルツハイマー型認知症などを引き起こします。

他方で、血糖値の急激な上昇に対して膵臓からインシュリンが一気に分泌されると、低血糖状態になり交感神経が過剰に興奮し、イライラ感や不安感、脱力感にさいなまれ、暴力衝動や無気力を引き起こします。この様な、血糖値のジェットコースターのような乱高下は、自律神経系の失調とホルモンの分泌異常を引き起こし、更に糖化現象や活性酸素の増加による細胞機能の劣化を引き起こします。

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▶続きは、岡治道医師、掲載記事のご紹介②「現代日本人の抱える食の問題<後編>」 

 

栄養療法の潮流と細胞膜栄養療法

 

 

投稿者: 予防医学・代替医療振興協会

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