母乳育児のすすめ
2019.02.07更新
現在の日本では女性の社会進出や核家族化、労働賃金の低下に伴い、少子化が進んでいます。
また、女性の社会に於ける活躍は喜ばしいことではありますが、産休からの職務復帰に合わせ、早い段階で人工乳や混合授乳に切り替えるお母さんたちが増え、充分に母乳栄養を受けないまま離乳を迎える赤ちゃんたちが多い状況でもあります。
母乳は、赤ちゃんが必要としている栄養素や免疫物質を十分に、バランス良く含んでおり、赤ちゃんの健康な心身をつくる上での完全食品です。
栄養素の消化や吸収を行う腸は、胎児では無菌状態ですが、出生時に産道から、また出生後にはお母さんの身体や周囲の環境から菌が感染し、自身の常在菌叢をつくり上げていきます。
そして、その常在菌叢は大きな変化がない状態で大人になっても持ち続け、免疫や栄養素の吸収・生成に深く関与する腸内環境をつくっていきます。
出生後、母乳栄養を充分に行うことで、赤ちゃんに常在菌が定着する前に、母乳の免疫物質によって丈夫な免疫力を育み、多様な栄養素を補うこともできるので腸に善玉菌が多く生息するようになります。
例えば、母乳で育った赤ちゃんと、人工乳で育った赤ちゃんの便を比較すると、前者だとビフィズス菌が多く甘酸っぱいにおいになりますが、後者の場合はビフィズス菌が少なく臭みの強いにおいになります。
そして、腸にビフィズス菌等の善玉菌が多い状態は、免疫機能だけでなく、栄養素やホルモンの吸収・生成を促すことで健全な心身を養うことに大きく役立つのです。
WHO(世界保健機関)では、UNICEF(国連児童基金)と共に母乳育児を推奨しており、以下のような「母乳育児を成功させるための10か条」を示しています。
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母乳育児を成功させるための10か条 (WHO/UNICEF)
① 母乳育児の方針を全ての医療に関わっている人に、常に知らせること
② 全ての医療従事者に母乳育児をするために必要な知識と技術を教えること
③ 全ての妊婦に母乳育児の良い点とその方法を良く知らせること
④ 母親が分娩後30分以内に母乳を飲ませられるように援助をすること
⑤ 母親に授乳の指導を充分にし、もし、赤ちゃんから離れることがあっても母乳の分泌を維持する方法を教えてあげること
⑥ 医学的な根拠がないのに母乳以外のもの、水分、糖水、人工乳を与えないこと
⑦ 母子同室にすること。赤ちゃんと母親が1日中24時間、一緒にいられるようにすること
⑧ 赤ちゃんが欲しがるときは、欲しがるままの授乳をすすめること
⑨ 母乳を飲んでいる赤ちゃんにゴムの乳首やおしゃぶりを与えないこと
⑩ 母乳育児のための支援グル−プ作って援助し、退院する母親に、このようなグル−プを紹介すること
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また、UNICEFは、2006年の世界母乳育児週間(8月1日から7日)に「開発途上国で母乳だけで育てられた子どもは、人工乳や混合乳で育てられた子どもよりも、1歳まで生き延びる確率が約3倍も高い」と発表しています。
この世界母乳育児週間のキャンペーンは120カ国以上で取り組まれていますが、母乳育児は「乳児に絶対的に必要な栄養が与えられる」「肺炎などの致命的な病気の感染予防などができる免疫力を、そして赤ちゃんの健全な成長と発達を促すことができる」等から、「生後6カ月の間、母乳だけを与えることが、赤ちゃんの健康にとって、大変大きなメリットである」ことを訴え、母乳育児の必要性について国際的な関心を呼び起こす取り組みを行っています。(参考:ユニセフ プレスリリース/2006年8月1日)
赤ちゃんのうちだけでなく、大人になってからもより心身が健康でいれるよう、可能な限り、母乳による育児を大切にしましょう。
そして、赤ちゃんのきれいな腸に、より多くの栄養素を届けられるよう、まずはお母さんの食生活を整えることが重要です。
主食(ご飯、パン、麺)だけの食事や加工食品での簡易的な食事に偏っていないでしょうか?
出来るだけ栄養バランスが整いやすい、和定食を心掛けると良いでしょう。
赤ちゃんの脳の発育に欠かせないレシチンを補うことが出来れば更に理想的です。
また、お母さんが摂ったアルコールやカフェインは母乳に移行し、赤ちゃんに悪影響を与えますので、控えるようにしましょう。
薬に関しても種類によって移行する危険がある為、妊娠期はもちろんですが授乳期も安易な服薬には注意することが大切です。
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