睡眠不足による脳機能や生活習慣病リスクへの影響
2021.05.14更新
人はなぜ眠るのか?なぜ夢を見るのか?睡眠には未知なことが沢山あります。
しかし、「疲労回復」「成長促進」などだけでなく、睡眠はあらゆる面から健康に関っていることが分かってきています。
睡眠には、身体を休息させるのみではなく、脳の休息やメンテナンス作業、情報の整理をする役割があると考えられています。
例えば、脳では、老廃物の処理は血流だけではなく、脳脊髄液と呼ばれる細胞間隙を満たす液体の流れが行っていますが、その処理のほとんどはノンレム睡眠中に行われていると言われています。
マウスを使った研究では、眠りを断つことにより、アルツハイマー型認知症の原因であるアミロイドβタンパク質が、記憶を司る海馬に蓄積することも報告されています。
アミロイドβタンパク質は覚醒時に脳内で蓄積し、睡眠時に洗い流されて少なくなる、ということです。
さらに、睡眠不足がメタボリックシンドローム、心血管疾患や代謝異常のリスク増加に関連していることも指摘されています。
コロンビア大学の研究チームの発表(2004年)では、32歳から59歳までの1万8,000人を調査したところ、平均睡眠時間が6時間の人は、望ましい睡眠時間とされている7時間の人に比べて23%も肥満になる確率が高く、睡眠時間が5時間の人は50%、睡眠時間が4時間以下の人は73%も肥満になる確率が高くなるといいます。
体重や食欲は、身体の恒常性を制御するメカニズムの影響を受けていますが、睡眠はこれらの機能の管理にも重要な役割をはたしていることが分かります。
また、健康な人でも睡眠が不足すると血糖値のコントロールが乱れるという報告もあります。
睡眠を休息ととらえてしまうと、つい睡眠時間を削ってしまったり、無理をしてしまいがちですが、長い目で見た場合には「脳機能」や「生活習慣病リスク」に関わる大切なものであることが分かります。
参考文献:睡眠の科学―なぜ眠るのかなぜ目覚めるのか―改訂新版(著者 櫻井武)
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NPO法人 予防医学・代替医療振興協会
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