サルコペニアとフレイル
2025.02.10更新
サルコが「筋肉」、ペニアが「減少」という意味で、「サルコペニア」とは加齢や疾患によって筋肉量が減少することを言い、徐々に身体機能の低下が起こる現象です。「フレイル」とは、身体機能や認知機能が低下して「虚弱」になった状態のことを言います。サルコペニアは筋肉量減少を主体として、筋力や身体機能の低下を主要因としているのに対して、フレイルは、移動能力/筋力/バランス/運動処理能力/認知機能/栄養状態/持久力/日常生活の活動性/疲労感など、非常に広い要素が含まれています。実は筋肉の量は、20歳代をピークに30歳代以降から年1%の割合で減少していきますが、加齢に伴い、その速度はますます高まり、1年で5%以上の減少率になる例もあります。
「歩くのが遅くなった」「転びやすくなった」「手すりにつかまらずに階段を上がれない」「活動的ではなくなった」「ペットボトルのキャップを開けにくくなった」などが当てはまる場合には、サルコペニアの可能性が考えられ注意が必要です。
【大腿部筋肉のMRIによる横断面】
25歳 75歳
【サルコペニアの簡単チェック方法】
サルコペニアを早期発見するにはどうしたらよいでしょうか。高齢者の方の腕や脚の筋肉量、握力、歩行速度を測るのは容易ではないので、サルコペニアの予備群を早期発見するのは難しいことです。そこで、東京大学高齢社会総合研究機構の飯島勝矢氏らが考案したのが「指輪っかテスト」という自己評価法です。「指輪っかテスト」の方法は、両手の親指と人差し指で輪っかを作り、ふくらはぎの最も太い部分を囲み、指のあまり具合を見るという方法です。「囲めない」「ちょうど囲める」「隙間ができる」と評価し、「隙間ができる」の場合は、筋肉量が少なくなっており、サルコペニアの疑いがあります。
【サルコペニア肥満…大丈夫ですか? 】
筋肉が減って脂肪が増える状態を「サルコペニア肥満」と言います。通常の肥満より高血圧や低体力になるリスクが高く、メタボよりも怖いと言われています。高齢者だけでなく、食事制限ダイエットや運動不足によって、若い人たちにも予備軍が見受けられます。食事を制限すると、身体に必要な栄養素が減って筋肉も衰えていきますが、筋肉が減少しても脂肪は燃焼されずに体内に残ってしまうのです。自分がサルコペニア肥満の状態かどうかを調べるには、脂肪量と筋肉量を量る必要があります。体組成計で測定が可能です。以下の基準を目安にしましょう。
★男性:筋肉量27.3%未満、BMI25以上
★女性:筋肉量22%未満、BMI25以上
体組成計がない場合には、以下の筋力テストである程度の判断ができます。
★腕を組んで椅子に座り、片足で立ち上がる
左右両方できない場合には危険信号です。
【たんぱく質を効率良く筋肉にする必要な栄養素】
筋肉を作りたい時や強化したい時に、たんぱく質が欠かせない栄養素であることは良く知られています。成人の場合には、体重1kgあたり0.8~1.2gのたんぱく質を摂ることが望ましいとされています。例えば体重50kgの人の場合には1日に40~60gのたんぱく質を摂取する必要があります。「たんぱく質=筋肉」と考えがちですが、食品からたんぱく質を摂取しただけでは筋肉にはなりません。それは、たんぱく質はペプチドやアミノ酸に分解されてから、筋肉に合成される必要があるからです。たんぱく質の分解、合成にはビタミンなど(ビタミンB6、ビタミンB1、アリシン、ビタミンD)の栄養素が関係しています。またアミノ酸の中でも筋肉の保持や増量にもっとも重要な役割を果たすのが「分岐鎖アミノ酸(BCAA)」です。BCAAとは、アミノ酸の一種であるバリン、ロイシン、イソロイシンの総称です。これらのアミノ酸は体の中では作ることができないため「必須アミノ酸」とも呼ばれています。BCAAは筋肉の分解を抑制して、筋肉のエネルギー源となります。BCAAの摂取目安は、1日あたり8~16gの範囲で摂るようにしましょう。また筋肉量を増やすためには同時に運動を行う必要があります。適度な運動を心掛けましょう。
サルコペニアやフレイルの予防のために、バランスの良い食事と適度な運動を心掛ける必要がありますが、高齢になると食事量の減少とともに、たんぱく質の摂取が少なくなる傾向にあります。植物性プロテインやペプチドなどの健康補助食品を上手に利用し、散歩や簡単な体操などを日々の習慣にすることが大切です。
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NPO法人 予防医学・代替医療振興協会
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