オメガ3系脂肪酸の摂取による不安症状の軽減
2019.09.10更新
オメガ3系脂肪酸といえば、DHA(ドコサヘキサエン酸)やEPA(エイコサペンタエン酸)、アルファリノレン酸がありますが、「集中力に良い」「血液をサラサラにしてくれる」「アレルギー症状を緩和する」など、よく耳にするかと思います。
栄養療法では不安症状の改善効果を期待して、うつ、不安神経症などの心のお悩みがある方に処方されることも多いようです。
今回は「オメガ3系脂肪酸の抗不安効果」ということで、昨年発表された面白い研究をご紹介させて頂きます。
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「オメガ3系脂肪酸の摂取による不安症状の軽減をメタアナリシスで確認」
国立研究開発法人国立がん研究センター、健康研究センター健康支援研究部をはじめとする共同研究グループは、青魚等に含まれるオメガ3系脂肪酸の抗不安効果を合計2,240人の不安症状を抱える人を対象とした19件の臨床研究をメタアナリシスで検討しました。
※メタアナリシスとは、複数のランダム化比較試験によるエビデンスを統合し、関心のある治療薬・ケア・対策の効果の大きさを評価し、より高い見地から正しい結論を導き出す解析方法。
■研究背景
不安は最も一般的にみられる精神症状であり、おおよそ3人に1人が生涯において何らかの不安症と診断されています。不安は生活の質や社会機能を低下させ、全死亡率を上昇させることにつながります。 がん患者さんにおいても、約半数のがんサバイバーが中等度以上の、7%が重度のがん再発不安を抱えていることが様々な研究で示されており、サバイバーシップにおける未だ満たされていないニーズの一つであることが指摘されています。不安症の治療法には選択的セロトニン再取り込み阻害薬や認知行動療法が用いられますが、前者は鎮静や依存などの副作用が懸念され、後者は治療にかかる時間、費用、そして治療者不足が課題となっています。身体疾患を抱える人の不安を和らげるための科学的根拠に基づく安全で簡便な対策が求められています。
近年、イワシ・サバ・サンマなど青魚に多く含まれるオメガ3系脂肪酸と不安の関連を調べる研究が多数行われ、オメガ3系脂肪酸の抗不安効果の検討が関心を集めています。マウスでの実験においても、オメガ3系脂肪酸の比率が高い餌を習慣的に食べさせると、恐怖体験について思い出したときの怖いという感覚(恐怖記憶と呼ぶ)が和らぐことが見出されています。しかし、これまで報告された臨床研究はサンプル数が少なく、研究によって結果のばらつきが大きく、オメガ3系脂肪酸が不安症状の軽減に効果があるかどうかについて明らかではありませんでした。
■解析対象
研究参加者:健常者、精神疾患患者、身体疾患患者
【臨床診断】
・精神:注意欠陥・多動性障害(ADHD)、境界性人格、トゥレット症候群、物質依存、
アルツハイマー病、うつ病、強迫症、心的外傷後ストレス障害(PTSD)
・身体:事故外傷、パーキンソン病、急性心筋梗塞、月経前症候群
・健常:看護師、成人、非喫煙者、高齢者、大学生
【背景】
・オメガ3系脂肪酸摂取群(1,203名、平均年齢 43.7歳、女性 55%)
・オメガ3系脂肪酸摂取量 平均1,605.7mg/d(225mg–4074mg)
・オメガ3系脂肪酸非摂取群(1,037名、平均年齢 40.6歳、女性 55%)
■研究結果
メタアナリシスの結果、オメガ3系脂肪酸を摂取した群はオメガ3系脂肪酸を摂取していない群と比較して、不安症状が軽減されることが明らかになりました。また層別化した解析の結果、身体疾患や精神疾患等の臨床診断を抱えている人を対象にした場合に抗不安効果が大きいことが示されました。更にオメガ3系脂肪酸を少なくとも2,000mg摂取してもらった場合に抗不安効果を認めることが示されました。
引用・転載:国立がん研究センター(がんサバイバーの再発不安を軽減する研究などへの応用を期待 オメガ3系脂肪酸の摂取による不安症状の軽減をメタアナリシスで確認)
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以上、本研究成果は、9月14日付けで米国医師会雑誌(JAMA)系列のオープンアクセスジャーナル『JAMA Network Open』へも掲載されたようです。
日頃、魚不足が気になる方は多いのではないでしょうか?
アレルギーや血液検査の数値が気になる方はもちろんですが、ストレスが強い方、不安になりやすい方、または脳の老化予防に・・・今一度、オメガ3系脂肪酸の摂取量を見直してみてはいかがでしょうか。
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