前回に引き継ぎ、11月9日(土)に開催された学術交流会の報告をさせて頂きます。
今回は、元厚生労働省厚生事務官でいらっしゃり、認知症予防・改善医療団理事長の松原義泰先生の講演内容をご紹介します。
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「認知症患者の現場」
松原 義泰 先生(認知症予防・改善医療団理事長、元厚生労働省厚生事務官)
今年9月に日本列島を襲った台風15号は、住家被害や停電、一都六県で139人の重軽傷者が出るなど大きな被害をもたらしました。
特に甚大な被害を受けた千葉県館山市にお住まいであった松原先生。
災害時における認知症患者の実態について講演をして頂きました。
少子高齢化が大きな社会問題となる日本では、高額な医療費、社会保障制度の実現可能性等、様々な課題が浮き彫りになりつつあります。
そのうちの一つである高齢者単独世帯の増加。千葉県館山市においてもそれは例外ではなく、高齢者単独世帯へ向けた支援の重要性を、台風15号の襲来で改めて実感したと、松原先生はおっしゃっていました。
館山市には、施設などに入所せず自宅での生活を続けている認知症患者の方が多くいらっしゃるそうです。
認知症患者の方と、そうでない方を見分けるのは難しく、そのため思わぬ誤解や事故を引き起こしやすくなります。
対策として、日頃から住民同士の関わりを持つことが重要であると先生は言います。
台風をはじめとした自然災害が起きたとき、すぐに動くことのできる高齢者はごく少数です。
インターネットを介した情報の発信が当たり前になった現代、高齢者にとっては、情報を追うことも難しくなってしまいました。
脳が萎縮していく認知症では、記憶力だけでなく理解力や判断力も低下してしまいます。
自然災害に立ち遭ったときどうすべきか、避難が必要かどうか等をすぐに判断できず、家の中でじっと過ごしてしまう方が多かったそうです。
また、災害後、館山市を含む千葉県では長期間の停電に多くの住民が悩まされました。
台風が直撃したのは9月6日、東電の発表によると停電が概ね解消されたのは同月24日夜でした。
3週間近くにもわたった停電は想像を絶するほどの苦難を強いられたようです。
避難所生活での問題点のひとつとして、先生は食事をあげられました。
備蓄のできる食品には、当然ながら食品添加物が大量に使用されています。
インスタント食品やパン中心の食事では栄養素の偏りが生じてしまいます。
避難生活による救援物資を頂いて、逆に体重が増えてしまったと、笑いを誘う場面もありました。
日本は災害大国だと言われています。
避難所における生活や食事の質を向上させることは今後の課題ともいえるでしょう。
予防医学を学び、推進しようとしている私たちに出来ることは何なのか、改めて考えさせられる講演でした。
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次回は、中国算命学研究家の砺波洋子先生の講演内容をご紹介致します。