会員限定ページ

2020.03.02更新

 

昨年11月9日(土)、東京・中野サンプラザに於いてP&A学術交流会を開催致しました。

既にNEWSLETTERでご覧になった方もいらっしゃるかと思いますが、今回から数回に分けて、各講師の先生方の講演内容を一部、ご報告させて頂きます。

まず、発達支援Kids Sense主宰・自閉症スペクトラム支援士でいらっしゃり、米国で学んだ発達支援の取り組みについて普及活動をされている茂木厚子先生の講演内容をご紹介させて頂きます。

 

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「療育先進国での発達支援の取り組み」

茂木 厚子 先生(発達支援Kids Sense主宰・自閉症スペクトラム支援士・保育士)

 

健康に長生きするスキルは、幼少期の環境が土台をつくります。

発達障害児が右肩上がりに増えている今、習い事が増え時間的制限がある、体を動かして外で遊べていない、食事が偏り慢性的な栄養不足、農薬や食品添加物などの化学物質、電磁波の暴露などが神経の成長を妨げています。

なかでも「遊び不足」は、茂木先生がカリフォルニアから帰国した17年前、大変衝撃的だったそうです。

子どもにとって遊びとは、生きる能力を育むもので、誰も教えないのに「子どもが遊ぶ」のは神経系を発達させるための本能なのです。

神経系の未発達によって問題行動とよばれる行動が起き、『発達障害』にカテゴライズされてしまう子どもが増えています。

しかし、本来は「未発達(発達段階)」と捉えるべきです。

例えば幼少期には誰もがブランコを延々と乗った記憶がありますが、これは無意識に自らバランス感覚を育てていて、自然と卒業していきます。

子どもの発育にミルクが必要なように、感覚刺激なしでは発達はありない。

米国では当たり前の概念です。

脳の発達には「快の状態」が必要で、安心感が得られた脳はスポンジのようにどんどん吸収して育ちますが、不快の状態が続くと石のように堅くなっていくため、脳は成長を止めてしまいます。

カリフォルニアでは「治療=薬」ではなく、環境設定(食・睡眠・健康・遊び)とサポート(合理的配慮・理解)が第一です。

教室に回転いすやペダルデスク(集中力を取り戻せる)、噛むグッズ(多動症が落ち着きやすい)を導入し、個々の成長を促します。

脳神経の成長スピードには個体差があることを充分理解し、社会に柔軟に採り入れていただきたいと思います。

 茂木厚子先生

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次回は、認知症予防・改善医療団理事長の松原義泰先生の講演内容をご紹介致します。

 

投稿者: 予防医学・代替医療振興協会

2020.02.26更新

 

「ストレスで白髪が増える」

よく耳にする話ですが、これまでこの根本的機構は解明されていませんでした。

 

1月22日、Natureオンライン版にて、米ハーバード大学幹細胞・再生医学准教授のYa-Chieh Hsu氏らがマウスを用いた実験でストレスがかかると白髪が減る機序を解明した旨を報告しました。

 

この研究は白髪についてですが、それだけでなくストレスによる様々な器官への影響を研究する基盤ともなるものです。

 

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生物はストレスを感じると、「闘うか逃げるか」(闘争・逃走反応)のどちらかを選ぶよう自律神経が働き、ノルアドレナリンが産生されます。

今回の実験では、マウスを物理的、心理的ストレスにさらしたところ、この闘争・逃走反応の一部を担う交感神経系が活性化されて、放出されたノルアドレナリンの影響で、毛包にある色素をつくる色素幹細胞が永続的に枯渇してしまうことが判りました。

Hsu氏の説明によると、「マウスに物理的、心理的なストレスを与えてから数日後には、色素幹細胞は過剰に反応した後、全て枯渇してしまった。幹細胞が消失すると色素は再生できなくなる。しかもこのダメージは永続的なものだった。」とのことです。

 これは動物実験の結果ではありますが、闘争・逃走反応のネガティブな影響を強調しているとし、論文筆頭著者の同大学Bing Zhang氏は「特に闘争・逃走反応を刺激するような急性ストレスは従来、動物が生き延びるために役立つと考えられてきた。しかし今回、急激なストレスがかかると幹細胞を永遠に失ってしまうことが分かった。」と述べています。

また、今回の実験はストレスによって白髪が増える機序を研究したものになりますが、Hsu氏は「ストレスに対する自律神経反応が色素幹細胞に与える影響を明らかにすることで、他の組織や器官への影響についても解明していく基盤をつくることができた」と述べています。

 

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ストレスを受けると、「免疫が下がる」「細胞の老化が進む」など、私たちは何となく認識をしながら生活しているかもしれません。

栄養学でいうならば、ストレスによって栄養素が消耗されることで組織の機能低下を促進させる、という機序が挙げられますが、この研究は特定の幹細胞への影響を示したものになり、今後は様々な組織や幹細胞への影響を解明するための研究に応用され、あらゆる疾病の解決の糸口への繋がっていくことが期待されます。

 

参考:Care Net/Nature Asia

 

 

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NPO法人 予防医学・代替医療振興協会

[ 公式サイト ] はこちら

 

 

投稿者: 予防医学・代替医療振興協会

2020.01.29更新

 

2020年を迎え、早くも1ヶ月が経とうとしています。会員の皆様に於かれましては、お変わりなくお過ごしでしょうか。

 

さて、近頃は新型コロナウイルスが話題になっていますね。今後は日本でも感染者が増えることが予想されています。また、インフルエンザもまだまだ油断ができませんので、感染対策を徹底されている方も多いのではないでしょうか。

今回は、習慣的にとり入れて頂きたい風邪やウイルス感染症の予防対策をご紹介します。すでに網羅している方もいるかもしれませんが、是非チェックしてみて下さい。

 

◇マスク・手洗い・うがい   

基礎的なことですが、外出時はマスクをし、帰宅後は手洗い・うがいを充分行いましょう。特に人が密集しているところではマスクを忘れないようにしましょう。鼻から顎までをしっかり覆い、隙間が出来にくいマスクを選ぶことが大切です。

 

◇鼻呼吸

口呼吸をすると、空気が乾燥した冷たい状態のまま肺に向かうため、咽頭や気道が乾燥し、炎症が起きやすくなります。また、空気中のウイルスが直接侵入するため、感染リスクが上昇します。鼻呼吸の場合は、副鼻腔で空気が加温・加湿されるため咽頭や気道の乾燥が起きにくく、また、鼻毛や粘液、扁桃リンパ組織によって異物の侵入が防御されますので、ウイルスの侵入を防ぎやすくなります。

 

◇加湿器を利用する

ウイルスは寒冷乾燥を好みます。「温度20度以上、湿度50~60%で空気中の感染力が下がる」と言われていますので、空調を調整し、出来るだけ加湿器を利用しましょう。最近は卓上加湿器なども販売されてますので、仕事場ではこのようなものを利用すると良いでしょう。

 

◇疲労・睡眠不足に注意する

「睡眠時間が7時間未満の人は、8時間以上眠る人に比べて3倍以上も風邪をひきやすい」と言われている他、睡眠の質が低下した場合も免疫力が低下することが分かっています。睡眠は身体の修復に不可欠な成長ホルモンの分泌に関ります。また睡眠不足や疲労によって自律神経が乱れることで免疫機能が不安定になりますので、風邪をひきやすくなります。

 

◇日頃から筋肉量を維持する

「体温が1℃下がると免疫力は30%以上低下する」と言われています。体温の低下を予防するためには筋肉量が必要です。日頃から筋肉量を維持するために身体を動かすことを心掛け、常に良好な血流を維持できるようにしましょう。また、運動量が減りがちな季節ですが、外で日光浴をしならが散歩をすると免疫機能の正常化に働くビタミンDが体内合成されますのでおすすめです。

 

◇食事の摂り方で免疫は変わる

免疫細胞や自律神経系などの指令系統、体温を高めるための筋肉や血液など、これらの材料となるのは食事であり栄養素です。まず栄養素をバランスよく補給するために主食・主菜・副菜を含む定食型の食事を心掛けましょう。+α、味噌汁・納豆などの発酵食品は腸内環境を整え、免疫細胞の活動をサポートしてくれますので是非とり入れると良いでしょう。逆に、免疫に負担をかけてしまう食事では、食品添加物が多く含まれる加工食品・出来合い食品、炎症を誘発する揚げ油などの過多摂取、腸管免疫を低下させるグルテン過多食品(パン・パスタ・菓子等)が挙げられます。

 

◇サプリメントの活用

食事からだけでは日頃のストレス対策や免疫にしっかり働いてもらうための栄養素が補いきれない場合が多いです。より安心するためにはサプリメントを利用すると良いでしょう。ビタミンCには免疫細胞を活性化する働きがありますが、ストレスや疲労で消耗されやすかったり、身体に貯蓄しにくい性質がありますので、この時期はこまめに摂ると良いでしょう。その他では、マルチミネラル(免疫細胞の保護、活性化)、糖鎖栄養素(免疫機能の正常化)、乳酸菌生産物質(腸内環境の改善)などがおすすめです。

 

厳しい寒さが続きますが、各位に於かれましてはくれぐれもご自愛下さい。

 

投稿者: 予防医学・代替医療振興協会

2019.11.26更新

 

気が付けば晩秋、肌寒い毎日が続いていますね。

 

先日11月9日(土)は学術交流会でした。

沢山の会員様にお越し頂きまして、心より御礼申し上げます。

お越しになれなかった皆様のために当日の講演内容を一部、会員限定ページでご紹介させて頂く予定となっております。

随時、更新して参りますので楽しみにして頂けましたら幸いです。

 

さて、今回は12月8日(日)に開催予定のワンデイセミナー(予防医学指導士・資格取得研修会)の講義内容をご案内させて頂きます。

予防医学指導士を勉強中の方はもちろん、既に資格を取得済みの方も初めての講義内容があれば是非ご参加下さい^^

また、過去に行っている講義内容も情報がリニューアルされていますのでお楽しみに!

 

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2019年度後期

予防医学指導士・資格取得研修会(ワンデイセミナー)

 

日時:2019年12月8日(日) 10:00~17:00

会場:全理連ビル4F

費用:10,000円(昼食代等込み)

持ち物:筆記用具、メモ

申込締切:2019年12月3日(火)

 

【講義内容】

⑴ 分子整合栄養医学と細胞膜栄養療法の違い(神津健一・医学博士)

⑵ 小麦製品・乳製品の健康への影響(秋山知慧・管理栄養士)

⑶ 栄養療法に於ける食事指導の実際(梶川瑛子・管理栄養士)

⑷ ナチュラルクリニック代々木の臨床報告(尾﨑さよ子・代替医療カウンセラー)

⑸ 脳のアンチエイジングと内美肌のつくり方(豊原悠里・管理栄養士)

⑹ 認知症と脳波検査/PRA毛髪検診の必要性(鈴木奈津子・ナチュラルクリニック代々木事務長)

⑺ 脳腸相関と発達障害/認知症の予防と改善 他(神津健一・医学博士)

 

※ 演目・講義内容は変更となる場合があります。気になる演目がある方はお気軽にお問い合わせ下さい。 

※ お申し込み・お問い合わせはこちら

 

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申込締切は1週間後となっております!

皆様のご参加を心よりお待ちしております^^

 

投稿者: 予防医学・代替医療振興協会

2019.10.01更新

 

10月を迎え、近頃は秋らしい気候になってきました。

食欲の秋、芸術の秋、学びの秋・・・秋は楽しみの多い季節ですね。

 

学術交流会までいよいよ後1ヶ月近くとなりましたが、皆様お申し込みはお済みでしょうか?

今回は、今年の学術交流会で特別講師としてお招きしているエリカ・アンギャル先生についてご紹介させて頂きます。

 

◆エリカ・アンギャル先生

2004年から8年間ミス・ユニバース・ジャパン公式栄養コンサルタントとして、知花くらら(2006年世界2位)、森理世(2007年世界1位)をはじめ、世界一の美女を目指すファイナリストたちに「美しくなる食生活」を指南。栄養学、薬理学、生理学など予防医学における幅広い専門知識を駆使し、”内側からより美しく、心も身体もすこやかに輝く”をテーマに、ハッピーな毎日のため食とライフスタイルを発信している。

 

◆ご略歴

1969年オーストラリア・シドニー生まれ。シドニー工科大学卒業、健康科学学士。ネイチャーケアカレッジ卒業(栄養学)。オーストラリア伝統的医薬学会(ATMS)会員。血液型と体質の個人差を研究するThe Institute for Human Individuality(IfHI)のフェロー(研究員)の資格を持つ。オーストラリアで医師とともに、アレルギーや自己免疫疾患、心臓病や糖尿病などの生活習慣病や、肌コンディションに悩む患者の治療に従事する。1985年に初来日し、大分の高校に1年間の交換留学。日本在住は今年2019年で計23年目。伝統的な和食と日本文化をこよなく愛す。日本女性の心に響くよう、磨き続けた日本語で、健康と美容に関する世界の新しい知識を紹介することに、深い情熱を注いでいる。

 

◆公式サイト

www.erica-angyal.com

 

エリカ・アンギャル先生

 

学術交流会はP&A会員の皆様でしたらお連れ様2名まで無料でご参加頂けます。

会員様同士の交流の機会にもなりますので、是非ご都合の宜しい方はお越し頂ければと思います^^

 

▶▶お申し込みはこちらから

 

 

投稿者: 予防医学・代替医療振興協会

2019.09.10更新

 

オメガ3系脂肪酸といえば、DHA(ドコサヘキサエン酸)やEPA(エイコサペンタエン酸)、アルファリノレン酸がありますが、「集中力に良い」「血液をサラサラにしてくれる」「アレルギー症状を緩和する」など、よく耳にするかと思います。

栄養療法では不安症状の改善効果を期待して、うつ、不安神経症などの心のお悩みがある方に処方されることも多いようです。

今回は「オメガ3系脂肪酸の抗不安効果」ということで、昨年発表された面白い研究をご紹介させて頂きます。

 

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「オメガ3系脂肪酸の摂取による不安症状の軽減をメタアナリシスで確認」

 

国立研究開発法人国立がん研究センター、健康研究センター健康支援研究部をはじめとする共同研究グループは、青魚等に含まれるオメガ3系脂肪酸の抗不安効果を合計2,240人の不安症状を抱える人を対象とした19件の臨床研究をメタアナリシスで検討しました。

※メタアナリシスとは、複数のランダム化比較試験によるエビデンスを統合し、関心のある治療薬・ケア・対策の効果の大きさを評価し、より高い見地から正しい結論を導き出す解析方法。

 

■研究背景

不安は最も一般的にみられる精神症状であり、おおよそ3人に1人が生涯において何らかの不安症と診断されています。不安は生活の質や社会機能を低下させ、全死亡率を上昇させることにつながります。 がん患者さんにおいても、約半数のがんサバイバーが中等度以上の、7%が重度のがん再発不安を抱えていることが様々な研究で示されており、サバイバーシップにおける未だ満たされていないニーズの一つであることが指摘されています。不安症の治療法には選択的セロトニン再取り込み阻害薬や認知行動療法が用いられますが、前者は鎮静や依存などの副作用が懸念され、後者は治療にかかる時間、費用、そして治療者不足が課題となっています。身体疾患を抱える人の不安を和らげるための科学的根拠に基づく安全で簡便な対策が求められています。

近年、イワシ・サバ・サンマなど青魚に多く含まれるオメガ3系脂肪酸と不安の関連を調べる研究が多数行われ、オメガ3系脂肪酸の抗不安効果の検討が関心を集めています。マウスでの実験においても、オメガ3系脂肪酸の比率が高い餌を習慣的に食べさせると、恐怖体験について思い出したときの怖いという感覚(恐怖記憶と呼ぶ)が和らぐことが見出されています。しかし、これまで報告された臨床研究はサンプル数が少なく、研究によって結果のばらつきが大きく、オメガ3系脂肪酸が不安症状の軽減に効果があるかどうかについて明らかではありませんでした。

 

■解析対象

研究参加者:健常者、精神疾患患者、身体疾患患者

【臨床診断】

・精神:注意欠陥・多動性障害(ADHD)、境界性人格、トゥレット症候群、物質依存、
    アルツハイマー病、うつ病、強迫症、心的外傷後ストレス障害(PTSD)
・身体:事故外傷、パーキンソン病、急性心筋梗塞、月経前症候群
・健常:看護師、成人、非喫煙者、高齢者、大学生

【背景】

・オメガ3系脂肪酸摂取群(1,203名、平均年齢 43.7歳、女性 55%)
・オメガ3系脂肪酸摂取量 平均1,605.7mg/d(225mg–4074mg)
・オメガ3系脂肪酸非摂取群(1,037名、平均年齢 40.6歳、女性 55%)

 

■研究結果

メタアナリシスの結果、オメガ3系脂肪酸を摂取した群はオメガ3系脂肪酸を摂取していない群と比較して、不安症状が軽減されることが明らかになりました。また層別化した解析の結果、身体疾患や精神疾患等の臨床診断を抱えている人を対象にした場合に抗不安効果が大きいことが示されました。更にオメガ3系脂肪酸を少なくとも2,000mg摂取してもらった場合に抗不安効果を認めることが示されました。

 

 

引用・転載:国立がん研究センター(がんサバイバーの再発不安を軽減する研究などへの応用を期待 オメガ3系脂肪酸の摂取による不安症状の軽減をメタアナリシスで確認)

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以上、本研究成果は、9月14日付けで米国医師会雑誌(JAMA)系列のオープンアクセスジャーナル『JAMA Network Open』へも掲載されたようです。

 

日頃、魚不足が気になる方は多いのではないでしょうか?

アレルギーや血液検査の数値が気になる方はもちろんですが、ストレスが強い方、不安になりやすい方、または脳の老化予防に・・・今一度、オメガ3系脂肪酸の摂取量を見直してみてはいかがでしょうか。

 

投稿者: 予防医学・代替医療振興協会

2019.08.01更新


パンや麺類、お菓子等の小麦製品に含まれるタンパク質「グルテン」について、腸管機能や神経機能に与える様々な影響が懸念されていますが、近年では健康な方でもグルテンの不耐性の検査を受けたり、食生活で小麦製品の摂り方に気を付ける方が増えてきました。

 

今回は、昨年にデンマーク・バルトリン研究所のKnud Josefsen氏らによって報告された、妊娠中のグルテン摂取と子どもの1型糖尿病リスクの関係についての研究をご紹介します。

 

この研究では、1996~2002年にデンマークの全国出生コホートに登録された妊婦6万3,529人(妊娠は6万7,565件)とその子どもを、2016年まで平均で15.6年間追跡調査しました。そして妊婦のグルテン摂取量を妊娠25週の時点で実施した食物摂取頻度調査票の結果から評価したところ、妊娠中にグルテン含有量の高い食品を多く摂取すると、生まれた子どもが1型糖尿病を発症するリスクが上昇する可能性があることが明らかになりました。

 

結果の要約は以下の通りとなります。

 

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■妊婦のグルテン摂取量は1日当たり平均13.0gであった。

■追跡期間中に247人の子どもが1型糖尿病を発症した。解析の結果、妊娠中の母親のグルテン摂取量が多いほど子どもの1型糖尿病リスクは増加することが分かった。母親のグルテン摂取量が1日に10g増えるごとに、子どもの1型糖尿病リスクは1.31倍に増加した。また、母親のグルテン摂取量が1日20g以上と最も多かった群では、1日7g未満と最も少なかった群に比べて、子どもの1型糖尿病リスクは2倍であった。尚、この研究は、母親の妊娠時年齢やBMI、総摂取カロリー、喫煙の有無など、潜在的に影響を及ぼす種々の因子を調整して解析している。

 

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これらの結果を踏まえて、Josefsen氏は「妊娠中の食生活を少し変えるだけで、子どもの1型糖尿病リスクを低減できる可能性が示唆された」と述べています。ただ、観察研究であるため因果関係が証明されたわけではなく、今後さらに検討を重ねる必要があると強調しています。

また、付随論説の著者の一人でフィンランド国立健康福祉研究所のMaija Miettinen氏は、母親が妊娠中にグルテンを多く含む食品を摂取する習慣があれば、子どもにもこうした食品を食べさせている可能性があるため、「母親のグルテン摂取と子どもの1型糖尿病リスクとの関連が、母親の胎内にいるうちにグルテンに曝露した結果なのか、幼少期の食生活の結果であるのか、あるいはその双方が関連しているのかは明らかになっていない」と付け加えています。

 

参考・引用:Care Net「妊娠中のグルテン摂取過多で児の1型糖尿病リスク増」/LINKDEDIET「妊娠中の高グルテン食は子供の糖尿病リスクの上昇につながる!?」

 

グルテンと子どもの発達についてはまだ研究段階で明らかになってないことも多いですが、栄養療法を取り組んでいる医療機関では子どもの発達障害やアレルギー、代謝異常等がグルテン摂取量を調整することで改善した例は多く挙げられています。

1型糖尿病との関連についてもこれから益々研究が進み、症例も多く得られるようになるかと思いますが、これまで予防が難しいとされていた1型糖尿病が防げる時代がくるかもしれませんね。

 

投稿者: 予防医学・代替医療振興協会

2019.07.25更新

 

前回に引き続き、「カンジダ菌による健康問題から身体を守るための方法」についてご紹介させて頂きます。

 

▶▶前回分をまだ見てない方はこちら

 

 

▼カンジダ菌が体内に与える影響

カンジダ菌の異常な増殖や菌糸体への変化は、様々な不調を引き起こします。

免疫系 花粉症、アレルギー、関節性リウマチ、かゆみなどの炎症反応等

消化器系 胃炎、下痢、食道炎、便秘、潰瘍性大腸炎、クローン病等

その他 味覚異常、舌痛症、気分の落ち込み、不眠、月経異常等

 

 

▼カンジダ菌との付き合い方

カンジダ菌は一生付き合っていく菌です。菌を増やしすぎず、組織侵襲性を示さない「酵母型」に変化させることが大切です。

 

【カンジダ菌とうまく付き合うための食事】

GOOD!

・新鮮な生野菜(カンジダ菌の菌糸化を抑制)

・海藻やきのこ類(腸内環境を整える)

・乳酸菌を含む発酵食品(腸内環境を整える)

・シナモンやバジル等のハーブ(解毒・抗菌作用)

・ニンニク、ショウガ等の香味野菜(解毒・抗菌作用)

NG…!

 ブドウ糖やショ糖など、砂糖を多く含む食べ物(カンジダ菌を増殖させ、菌糸化を促進させる)

 

【カンジダ菌を増やさないための生活習慣】

・抗生物質は腸内の常在菌を破壊してしまうので、長期での服用は控えましょう。

・免疫力が低下すると、常在菌とのバランスが崩れ、カンジダ菌が増殖しやすくなります。免疫細胞が多く存在する腸内環境を整えましょう。

 

 

▼栄養療法で利用される、カンジダ菌対策サプリメント

オリーブリーフ

天然の抗生物質オリーブリーフ。増えすぎてしまったカンジダ菌がもちろん、腸内の悪玉菌の除去にもおすすめです。

バイオジェニックス

免疫は腸内環境と密接な関係があります。腸内環境を整えることで、カンジダ菌が優位になるのを予防します。

 

投稿者: 予防医学・代替医療振興協会

2019.07.19更新

 

食生活の変化、長寿化などが原因で問題視されはじめた酵母:カンジダ菌をご存知でしょうか。今回は、

「カンジダ菌とはどのようなものか?」

「カンジダ菌による健康問題から身体を守るための方法」

について、前編・後編の2回に分けてご紹介します。

 

▼身近な酵母・カンジダ菌

酵母は、みそ・しょうゆなどの発酵食品を作るものとして、古くから親しまれてきました。酵母には様々な種類が存在しますが、世界中の人の口から腸までの消化管や膣、皮膚などから検出できると言われている「カンジダ菌」をご存知でしょうか。カンジダ菌は、分娩時や授乳時に赤ちゃんの体内に入り込み、その後も常在菌として生き続けますが、近年では食生活の変化や高齢化によって、カンジダ菌が病原菌として注目されるようになっています。

 

▼カンジダ菌・体内での働き

通常カンジダ菌は「酵母型」という形で体内に存在します。人の免疫細胞を刺激し、細胞性免疫を強める働きをしており、本来は健康上の被害を与えるものではありません。しかし、加齢や生活習慣などが要因となって「菌糸型」に形態を変化させてしまうことで、炎症や免疫・消化管の不調などの健康被害を引き起こしています。

Candida

 

▼こんな人は要注意!簡易チェックリスト

☐ 日常的に糖質や、砂糖を多く含む食品の摂取が多い

☐ 食後、頭が働かない・ぼーっとすることがある

☐ 皮膚に原因不明のかゆみがある

☐ やる気が起こらず、疲労感が抜けない

☐ 過去に水虫や膣カンジダになったことがある

☐ 便秘や下痢などお通じの悩みがある

 

多くあてはまるほど、体内のカンジダ菌の多くが菌糸型に変化している可能性があります。カンジダ菌は完全には排除できませんので、上手に付き合うことが大切です。

 

 

「カンジダ菌による健康への影響<後編>」へつづく

 *次回は、カンジダ菌が体内に与える影響や、カンジダ菌との付き合い方について、ご紹介させて頂きます。

 

投稿者: 予防医学・代替医療振興協会

2019.07.12更新

 

今回で最後となりますが、前回に引き続き、ザ・フナイ(2019年6月号)「本物の探究者」特集で紹介された岡治道先生の記事をご紹介させて頂きます。

 

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■細胞膜栄養療法の実際<後編>

4.バイオジェニックスによる腸内細菌叢と免疫の改善

60兆個の細胞からなる人間の腸管内には100兆から600兆個もの腸内細菌が生息し、人に有益なビタミンや脂肪酸などの栄養素の提供、消化吸収の補助、便の形成、有害細菌侵入の防衛、そして免疫機能の調整などの重要な作用が認識され、良好な腸内環境を保つ意義が注視されています。

腸内環境の改善手段には、オリゴ糖などを投与して腸内細菌を活性化するプレバイオティクスや、ビフィズス菌を含む乳酸菌を腸に届けるプロバイオティクスが知られていますが「バイオジェニックス」はこれらとは異なり「直接、あるいは腸内フローラを介して免疫賦活、コレステロール低下作用、血圧降下作用、整腸作用、抗腫瘍効果、抗血栓、造血作用などの生体調節機能を発揮する食品成分」と定義され、微生物が生産したフラボノイド、生理活性ペプチド、免疫賦活物質、ビタミン、脂肪酸などを抽出・濃縮したものです。より効率的な腸内環境と「脳腸相関」の改善により、神経・内分泌系の円滑な機能発現が可能になると期待されています。

 

終わりに

生命科学の最大の目標は「人々が自信に満ちて楽しく健康で長生きできること」と言えます。

ライナス・ポーリング博士は、1960年代にメガビタミン療法を提唱しアメリカ人を熱狂させましたが、複数の臨床研究において最大摂取の有益性は必ずしも認められず、その後もビタミン療法に対する懐疑的な研究結果が発表されています。このような単純に「有益なものは大量に用いるのが良い」という発想は、食べものや栄養が与える影響を過大に評価する、フードファディズムという非科学的、集団催眠的そして商業活動的な主張のようにも見えます。私たちは栄養素の摂取は「必要なものを適量摂取してこその有益」と考えています。

栄養療法の臨床からは、①多くの栄養因子が健康に関わり、その何れも完全に失うことができず、また他を補完することができないこと②個々人の年齢や性別、運動量、基礎代謝、睡眠時間などが複雑に関与して栄養素の必要量を規定し、変動しているということ③体の持つ蓄積能力や代謝調節など種々の保全機能が破綻し、恒常性を逸脱した状態が不健康であることを学んでいます。

私たちの栄養療法は日進月歩の科学研究の中で、患者に寄り添いながら現実を注視し、ひたむきで継続的な栄養素の匙加減と日常の食生活の健全化による、細胞活性化と代謝改善を図ることによって、自身に満ち、楽しく健康で長生きできるという共通の目的を達成しようとしているものです。

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現代人の食問題、栄養療法における細胞膜機能の重要性を始め、予防医学の普及を願う当会としてもとても勉強させて頂ける記事でした。

①~⑤をまだご覧でない方は是非、①から読んでみて下さいね。

 

【岡医師、掲載記事のご紹介①~⑤】

①現代日本人の抱える「食の問題」<前編>

②現代日本人の抱える「食の問題」<後編>

③栄養学から栄養療法へ

④細胞膜栄養療法と背景

⑤細胞膜栄養療法の実際<前編>

 

投稿者: 予防医学・代替医療振興協会

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