▮摂食時刻の肥満への影響
従来の栄養学では、同じ人が等しいエネルギー量・栄養素量を摂取すれば、その栄養学的効果は等しいと仮定していました。
しかし時間栄養学では、同一の食事であっても、摂取時刻や摂取速度、摂取順序によって、代謝が大きく異なる事実に立脚しています。
例えば、一律500kcalの食事を、朝・昼・夕食または昼・夕・夜食に摂取したときの、毎食の食事誘発性熱産生(DIT/食事により消費されるエネルギー量)を見ると、朝食は夜食の4倍ものDITがあり、朝食は心身の活性化にエネルギーを消費するためDITが多く、夜食は朝食DITの4分の3が脂肪に合成されます。
つまり、1日のエネルギー摂取が等しくとも、朝食は心身の活性化、体温上昇に必要であり、夜食は肥満を促進するということです。
このようなことから、十分な朝食、軽い夕食、夜食の回避が勧められているのです。
また、一貫して等エネルギー量摂取であったとしても、高脂肪食を自由摂取した場合には高度肥満が起こりますが、摂取時刻を活動期の8時間に制限すると、高脂肪食でも肥満は起こらず、活動量が増えることが分かっています。
摂取時刻が活動期(朝昼)か休止期(夕夜)かによって、栄養学的な効果には大きな相違があるのです。
▮食事による末梢時計遺伝子のリセット
主時計遺伝子が網膜メラノプシンの受光の神経刺激でリセットされるのに対し、全身の細胞にある末梢時計遺伝子は食事でリセットされます。
光によるリズム形成ができない明暗の変動の少ない環境や、視覚障害があっても日周リズムが維持されるのは、末梢時計遺伝子が食事摂取でリセットされるためです。
しかし、糖質かタンパク質いずれかの単独の摂取ではリセット効果はなく、両者を同時に与えることで末梢時計が初めてリセットされます。
つまり、「朝食でタンパク質を摂ると体内リズムに良い」ことはよく知られていますが、タンパク質だけ(例えばプロテイン、ゆで卵、サラダチキンなど高タンパクなものだけで食事を済ませてしまうこと)ではなく、合わせて糖質(炭水化物)もある程度摂ることが大切なのです。
【参考文献】分子栄養学(栄養科学シリーズNEXT)/発行:講談社/編:宮本賢一・井上裕康・桑波田雅士・金子一郎
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NPO法人 予防医学・代替医療振興協会