今回で最後となりますが、前回に引き続き、ザ・フナイ(2019年6月号)「本物の探究者」特集で紹介された岡治道先生の記事をご紹介させて頂きます。
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■細胞膜栄養療法の実際<後編>
4.バイオジェニックスによる腸内細菌叢と免疫の改善
60兆個の細胞からなる人間の腸管内には100兆から600兆個もの腸内細菌が生息し、人に有益なビタミンや脂肪酸などの栄養素の提供、消化吸収の補助、便の形成、有害細菌侵入の防衛、そして免疫機能の調整などの重要な作用が認識され、良好な腸内環境を保つ意義が注視されています。
腸内環境の改善手段には、オリゴ糖などを投与して腸内細菌を活性化するプレバイオティクスや、ビフィズス菌を含む乳酸菌を腸に届けるプロバイオティクスが知られていますが「バイオジェニックス」はこれらとは異なり「直接、あるいは腸内フローラを介して免疫賦活、コレステロール低下作用、血圧降下作用、整腸作用、抗腫瘍効果、抗血栓、造血作用などの生体調節機能を発揮する食品成分」と定義され、微生物が生産したフラボノイド、生理活性ペプチド、免疫賦活物質、ビタミン、脂肪酸などを抽出・濃縮したものです。より効率的な腸内環境と「脳腸相関」の改善により、神経・内分泌系の円滑な機能発現が可能になると期待されています。
終わりに
生命科学の最大の目標は「人々が自信に満ちて楽しく健康で長生きできること」と言えます。
ライナス・ポーリング博士は、1960年代にメガビタミン療法を提唱しアメリカ人を熱狂させましたが、複数の臨床研究において最大摂取の有益性は必ずしも認められず、その後もビタミン療法に対する懐疑的な研究結果が発表されています。このような単純に「有益なものは大量に用いるのが良い」という発想は、食べものや栄養が与える影響を過大に評価する、フードファディズムという非科学的、集団催眠的そして商業活動的な主張のようにも見えます。私たちは栄養素の摂取は「必要なものを適量摂取してこその有益」と考えています。
栄養療法の臨床からは、①多くの栄養因子が健康に関わり、その何れも完全に失うことができず、また他を補完することができないこと②個々人の年齢や性別、運動量、基礎代謝、睡眠時間などが複雑に関与して栄養素の必要量を規定し、変動しているということ③体の持つ蓄積能力や代謝調節など種々の保全機能が破綻し、恒常性を逸脱した状態が不健康であることを学んでいます。
私たちの栄養療法は日進月歩の科学研究の中で、患者に寄り添いながら現実を注視し、ひたむきで継続的な栄養素の匙加減と日常の食生活の健全化による、細胞活性化と代謝改善を図ることによって、自身に満ち、楽しく健康で長生きできるという共通の目的を達成しようとしているものです。
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現代人の食問題、栄養療法における細胞膜機能の重要性を始め、予防医学の普及を願う当会としてもとても勉強させて頂ける記事でした。
①~⑤をまだご覧でない方は是非、①から読んでみて下さいね。
【岡医師、掲載記事のご紹介①~⑤】