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2019.06.25更新

 

前回に引き続き、ザ・フナイ(2019年6月号)「本物の探究者」特集で紹介された岡治道先生の記事をご紹介させて頂きます。

 

▶前回分をまだ見てない方はこちら

 

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■現代日本人の抱える「食の問題」<後編>

4.肥満(飽食)と食の問題

日本国民は太平洋戦争後に高度の栄養不足に見舞われました。特に子供たちの栄養失調は深刻で、GHQ(連合国最高司令官総司令部)は脱脂粉乳と小麦を提供しました。その後、1970年代の経済成長に伴って、栄養状態は大幅に改善しました。

もともと沖縄県は、甘藷(サツマイモ)が主食で肥満が少ない県でした。ところがアメリカ合衆国の統治下となった戦後は、輸入食肉および肉加工食品が大量に導入されたことにより脂肪摂取比率が欧米化(30%超え)し、1972年の沖縄返還によりコメが一般化すると肥満人口割合が更に増加し、BMIは本土男性の平均に比較して2.0(kg/㎡)も高くなってしまいました。そして沖縄県の高齢者を除いた平均余命は急速に短縮し、長寿県第1位から大きく転落しました。

近年の先進諸国における飽食(過食)文化により、肥満者やメタボリックシンドローム、精神疾患や癌の増加が大きな社会問題となっています。人類が飢餓に対応すべく進化し続けた歴史に比べ、わずか50年から100年程度では栄養過剰に対応する機能が準備できないのでしょう。

「2018年、世界人口の11%に当たる8億1500万人が飢餓状態である」ことに、皆様と改めて思いをはせなければならないと思います。もう少し、食料や富、教育の機会や安全な生活環境の偏在が修正されるように、英知を結集していかなければなりません。

 

5.サプリメント(健康補助食品)と食の問題

サプリメントが全盛の今日ですが、皆様は何種類位、利用しておられますか。

2015年の内閣府が実施した「健康食品」利用に関する実態調査では、

 ①50歳代以上の約3割が健康食品をほぼ毎日利用。

 ②医療機関への受診等をすることなく、健康食品で不健康な状態を改善しようとした経験がある者は約4割。

 ③約5割の利用者が2種類以上のサプリメントを利用し、年齢が上がるほど多種類を併用する傾向がある。

 ④健康食品利用者のうち通院をしている者の約8割が、医薬品の処方を受けるにあたり医師等から健康食品の利用状況に関する確認を受けていない。

以上のことが判明しました。

この調査から、体調不良を栄養素不足ととらえ、食品からではなく特段の根拠もなくサプリを選択し、「薬ではないから安全」と誤った認識を持っている、更に医師もサプリの服用や栄養療法の重要性を認識していない、という実態が浮かび上がってきています。実際は、サプリでも過剰摂取による問題が指摘されています。特に治療薬の効果を激変させるものがあり、内服治療中の方はサプリメントの併用に慎重でなければなりません。生命にかかわる重大合併症も多数報告されているからです。

 

6.未病対策と食の問題

「体育智育才育は即ち食育なり」、この「食育」という言葉は、石塚左玄が1896年(明治29年)に造語し用いられています。1952年(昭和27年)施行された「栄養改善法」は、国民の栄養改善(特に栄養失調)を目的とし、2002年(平成14年)に「健康増進法」へと引き継がれました。この中で「我が国における急速な高齢化の進展及び疾病構造の変化に伴い、国民の健康への増進の重要性が著しく増大していること」を前提とし、国民の義務として「国民は、健康な生活習慣の重要性に対する関心と理解を深め、生涯にわたって、自らの健康状態を自覚するとともに、健康の増進に努めなければならない」、更に自治体や医療機関などに「健康増進事業」への協力義務を課しているなどの特徴があります。これによって検診事業、健康相談事業の充実、受動喫煙の防止、特定保健用食品(トクホ)制度などによる健康増進を政策的に行うとしています。

更に、2005年(平成17年)に「食育基本法」が制定されました。この法律の前文(趣旨)は実に格調高く、健康増進にご興味のある方にはご一読頂きたいと思います。現在は農林水産省が「健康で文化的な国民の生活と、豊かで活力のある社会の実現に寄与することを目的」として、食育の推進に関する施策の総合的かつ計画的な実施を担っており、食育の定義を「食育は、生きる上での基本であって、知育・徳育・体育の基礎となるものであり、様々な経験を通じて『食』に関する知識と『食』を選択する力を習得し、健全な食生活を実現することができる人間を育てることです」と明文化しています。この法律の意味するものは、食の問題は国家レベルで改善しなければならないところまで深刻化しているということです。適切な教育や社会活動によって栄養、食品、調理、生活習慣についての正しい知識を持ち、自らの食と健康に責任を持てるようインテリジェンスと技術を身に付けることが、未来への大きな資産となるのです。

また国民の健康に関するこれらの法律の変化は、法律が現況を鑑み変化するというダイナミズムを示しています。そして常に変更・改正が行われていることからも、国民の健康は単なる生命科学ではなく、社会学・法学・教育・産業などが相互協力の上でなされるものと実感します。

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▶続きは、岡治道医師、掲載記事のご紹介③「栄養学から栄養療法へ」

 

投稿者: 予防医学・代替医療振興協会

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