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2019.07.25更新

 

前回に引き続き、「カンジダ菌による健康問題から身体を守るための方法」についてご紹介させて頂きます。

 

▶▶前回分をまだ見てない方はこちら

 

 

▼カンジダ菌が体内に与える影響

カンジダ菌の異常な増殖や菌糸体への変化は、様々な不調を引き起こします。

免疫系 花粉症、アレルギー、関節性リウマチ、かゆみなどの炎症反応等

消化器系 胃炎、下痢、食道炎、便秘、潰瘍性大腸炎、クローン病等

その他 味覚異常、舌痛症、気分の落ち込み、不眠、月経異常等

 

 

▼カンジダ菌との付き合い方

カンジダ菌は一生付き合っていく菌です。菌を増やしすぎず、組織侵襲性を示さない「酵母型」に変化させることが大切です。

 

【カンジダ菌とうまく付き合うための食事】

GOOD!

・新鮮な生野菜(カンジダ菌の菌糸化を抑制)

・海藻やきのこ類(腸内環境を整える)

・乳酸菌を含む発酵食品(腸内環境を整える)

・シナモンやバジル等のハーブ(解毒・抗菌作用)

・ニンニク、ショウガ等の香味野菜(解毒・抗菌作用)

NG…!

 ブドウ糖やショ糖など、砂糖を多く含む食べ物(カンジダ菌を増殖させ、菌糸化を促進させる)

 

【カンジダ菌を増やさないための生活習慣】

・抗生物質は腸内の常在菌を破壊してしまうので、長期での服用は控えましょう。

・免疫力が低下すると、常在菌とのバランスが崩れ、カンジダ菌が増殖しやすくなります。免疫細胞が多く存在する腸内環境を整えましょう。

 

 

▼栄養療法で利用される、カンジダ菌対策サプリメント

オリーブリーフ

天然の抗生物質オリーブリーフ。増えすぎてしまったカンジダ菌がもちろん、腸内の悪玉菌の除去にもおすすめです。

バイオジェニックス

免疫は腸内環境と密接な関係があります。腸内環境を整えることで、カンジダ菌が優位になるのを予防します。

 

投稿者: 予防医学・代替医療振興協会

2019.07.19更新

 

食生活の変化、長寿化などが原因で問題視されはじめた酵母:カンジダ菌をご存知でしょうか。今回は、

「カンジダ菌とはどのようなものか?」

「カンジダ菌による健康問題から身体を守るための方法」

について、前編・後編の2回に分けてご紹介します。

 

▼身近な酵母・カンジダ菌

酵母は、みそ・しょうゆなどの発酵食品を作るものとして、古くから親しまれてきました。酵母には様々な種類が存在しますが、世界中の人の口から腸までの消化管や膣、皮膚などから検出できると言われている「カンジダ菌」をご存知でしょうか。カンジダ菌は、分娩時や授乳時に赤ちゃんの体内に入り込み、その後も常在菌として生き続けますが、近年では食生活の変化や高齢化によって、カンジダ菌が病原菌として注目されるようになっています。

 

▼カンジダ菌・体内での働き

通常カンジダ菌は「酵母型」という形で体内に存在します。人の免疫細胞を刺激し、細胞性免疫を強める働きをしており、本来は健康上の被害を与えるものではありません。しかし、加齢や生活習慣などが要因となって「菌糸型」に形態を変化させてしまうことで、炎症や免疫・消化管の不調などの健康被害を引き起こしています。

Candida

 

▼こんな人は要注意!簡易チェックリスト

☐ 日常的に糖質や、砂糖を多く含む食品の摂取が多い

☐ 食後、頭が働かない・ぼーっとすることがある

☐ 皮膚に原因不明のかゆみがある

☐ やる気が起こらず、疲労感が抜けない

☐ 過去に水虫や膣カンジダになったことがある

☐ 便秘や下痢などお通じの悩みがある

 

多くあてはまるほど、体内のカンジダ菌の多くが菌糸型に変化している可能性があります。カンジダ菌は完全には排除できませんので、上手に付き合うことが大切です。

 

 

「カンジダ菌による健康への影響<後編>」へつづく

 *次回は、カンジダ菌が体内に与える影響や、カンジダ菌との付き合い方について、ご紹介させて頂きます。

 

投稿者: 予防医学・代替医療振興協会

2019.07.12更新

 

今回で最後となりますが、前回に引き続き、ザ・フナイ(2019年6月号)「本物の探究者」特集で紹介された岡治道先生の記事をご紹介させて頂きます。

 

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■細胞膜栄養療法の実際<後編>

4.バイオジェニックスによる腸内細菌叢と免疫の改善

60兆個の細胞からなる人間の腸管内には100兆から600兆個もの腸内細菌が生息し、人に有益なビタミンや脂肪酸などの栄養素の提供、消化吸収の補助、便の形成、有害細菌侵入の防衛、そして免疫機能の調整などの重要な作用が認識され、良好な腸内環境を保つ意義が注視されています。

腸内環境の改善手段には、オリゴ糖などを投与して腸内細菌を活性化するプレバイオティクスや、ビフィズス菌を含む乳酸菌を腸に届けるプロバイオティクスが知られていますが「バイオジェニックス」はこれらとは異なり「直接、あるいは腸内フローラを介して免疫賦活、コレステロール低下作用、血圧降下作用、整腸作用、抗腫瘍効果、抗血栓、造血作用などの生体調節機能を発揮する食品成分」と定義され、微生物が生産したフラボノイド、生理活性ペプチド、免疫賦活物質、ビタミン、脂肪酸などを抽出・濃縮したものです。より効率的な腸内環境と「脳腸相関」の改善により、神経・内分泌系の円滑な機能発現が可能になると期待されています。

 

終わりに

生命科学の最大の目標は「人々が自信に満ちて楽しく健康で長生きできること」と言えます。

ライナス・ポーリング博士は、1960年代にメガビタミン療法を提唱しアメリカ人を熱狂させましたが、複数の臨床研究において最大摂取の有益性は必ずしも認められず、その後もビタミン療法に対する懐疑的な研究結果が発表されています。このような単純に「有益なものは大量に用いるのが良い」という発想は、食べものや栄養が与える影響を過大に評価する、フードファディズムという非科学的、集団催眠的そして商業活動的な主張のようにも見えます。私たちは栄養素の摂取は「必要なものを適量摂取してこその有益」と考えています。

栄養療法の臨床からは、①多くの栄養因子が健康に関わり、その何れも完全に失うことができず、また他を補完することができないこと②個々人の年齢や性別、運動量、基礎代謝、睡眠時間などが複雑に関与して栄養素の必要量を規定し、変動しているということ③体の持つ蓄積能力や代謝調節など種々の保全機能が破綻し、恒常性を逸脱した状態が不健康であることを学んでいます。

私たちの栄養療法は日進月歩の科学研究の中で、患者に寄り添いながら現実を注視し、ひたむきで継続的な栄養素の匙加減と日常の食生活の健全化による、細胞活性化と代謝改善を図ることによって、自身に満ち、楽しく健康で長生きできるという共通の目的を達成しようとしているものです。

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現代人の食問題、栄養療法における細胞膜機能の重要性を始め、予防医学の普及を願う当会としてもとても勉強させて頂ける記事でした。

①~⑤をまだご覧でない方は是非、①から読んでみて下さいね。

 

【岡医師、掲載記事のご紹介①~⑤】

①現代日本人の抱える「食の問題」<前編>

②現代日本人の抱える「食の問題」<後編>

③栄養学から栄養療法へ

④細胞膜栄養療法と背景

⑤細胞膜栄養療法の実際<前編>

 

投稿者: 予防医学・代替医療振興協会

2019.07.09更新


引き続き、ザ・フナイ(2019年6月号)「本物の探究者」特集で紹介された岡治道先生の記事をご紹介させて頂きます。

 

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■細胞膜栄養療法の実際<前編>

1.クリニックでの診療

細胞膜栄養療法はK・リゾレシチンと糖鎖栄養の投与による膜機能の改善と、腸内環境の整備による栄養素の吸収改善を先行または同時に、不足した栄養素を補充していきます。そのためには症状と経過、食事内容の聴取、診察、採血、PRA毛髪検査などにより栄養素の過不足を評価して治療計画を立て、出来るだけ食材から摂取するよう栄養指導や調理指導を行いますが、サプリメントを必要とする場合には使用経験に基づき有益性が確認されたものを提案します。通常一回の受診時間は、診察と栄養指導を含めて1時間程度になります。

臨床では総カロリー・糖質・脂質の過剰、ビタミンB群とタンパク質、鉄や亜鉛などのミネラル、ω3系脂肪酸、食物繊維の不足が多く、便秘など腸の不良も共通して認められます。通常は治療開始から3週間程度で、多くの方が改善の兆しを体感されます。

治療薬の減薬や中止の希望には、栄養療法による改善状態を導き出し、結果として減薬や断薬が可能となることを説明します。自己判断での断薬は重大な離脱症状を招くことがあります。症状改善に合わせて漸減させ、場合によっては他科の主治医の協力を得て減薬します。

 

2.基本サプリメントとしてのK・リゾレシチン

細胞膜栄養療法の基本となるレシチンの摂取は、可能な限り自然界の存在様式に近い形が理想です。高純度で高濃度を大量に摂る方法では、効果が得られませんでした。クリニックではリゾ化されたレシチンに、フォスファチジルセリン、オリゴ糖(食物繊維)、吸収や利用を高める程度の複合的なビタミンを中心に構成された、食品そのものといえるような構成内容のサプリメント(K・リゾレシチン)を使用します。

リゾレシチンとはフォスファチジルコリンを形成する2本の疎水性脂肪酸のうちの一本を酵素で切断(リゾ化)したもので、更に特殊栄養素を加える(K・リゾレシチン)ことにより口腔粘膜からも急速に吸収され、脳血液関門を容易に透過できます。これは摂取後15分後で脳波上にα波が急速に出現し2時間以上にわたって持続する現象でとらえられ、脳代謝への即効性を示しています。α波の出現により、K・リゾレシチンが集中力を高めるなどの脳機能向上に有益と言われています。

 

3.糖鎖による活性賦活

糖鎖は生命に必須の構造ですが、加齢による減少や活性酸素・糖化現象による変性が機能低下を起こします。クリニックでは、ガラクトース、マンノースなどの8種類の糖鎖栄養素にマルチビタミンなどを付加した製品を、糖鎖機構の改善目的で使用します。これらが糖鎖形成の原材料となるかは生体内動態が不明で判断できませんが、糖鎖原料である種々の糖が同時に吸収されると糖鎖構造の広範囲の崩壊と判断し、細胞の糖鎖合成が全身的に活発化する可能性があります。

いずれにしても糖鎖栄養素は、臨床的には向上の体感を伴う不可欠な手段となっています。

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▶続きは、岡治道医師、掲載記事のご紹介⑥「細胞膜栄養療法の実際<後編>」

 

投稿者: 予防医学・代替医療振興協会

2019.07.05更新

 

引き続き、ザ・フナイ(2019年6月号)「本物の探究者」特集で紹介された岡治道先生の記事をご紹介させて頂きます。

 

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■細胞膜栄養療法と背景

1.細胞膜栄養療法の立脚点

細胞膜栄養療法は「生命の原点であり生命活動の源は細胞膜である」そして「細胞は人工的で過度に純粋化された物質を嫌う」ということに着目し、栄養状態の改善には先んじて細胞膜の健全化を行い、できる限り自然界の存在様式に近い形で栄養素を補完し、薬剤や合成栄養素を排除することで、効率よく細胞の機能を改善することがグランドデザインです。

開発者の神津健一博士は、40年前にレシチンと出合い、創意工夫を重ね、新型の「K・リゾレシチン」を開発し、細胞膜栄養療法を確立しました。そして神津博士は細胞膜栄養療法に特化した専門医療機関である「医療法人社団一友会ナチュラルクリニック代々木」を設立し開院したのは2004年、日本で初めての栄養療法に特化したクリニックです。

私は2017年以来、代替医療としての栄養療法を担当しています。当初は心療内科的な疾患が過半数でしたが、栄養療法の社会的認知に伴って認知症の予防や、アンチエイジング、疲労感の回復、妊娠希望など様々なニーズに対してご相談を受けています。

私たちが栄養療法を行う基本であり一次的条件は、「細胞膜の正常化」です。それは生命の起源を、リンを含んだ油、即ちリン脂質であるレシチン(フォスファチジルコリン)によるリン脂質二重膜構造を持った球体と考えるからです。この細胞膜を介して栄養素や代謝産物、情報のやり取りがスムーズに行われることが生命活動の基本ですから、何よりも先に細胞膜の状態を改善しなければ次に進めません。

 

2.リン脂質(レシチン)の多彩な機能

レシチンには細胞膜の基本構成物である以外にも、さまざまなタンパク質や脂質、抗原情報、遺伝子情報等の内容物を、リン脂質二重膜のコンテナ(エクソソーム)に収納し相手先となる細胞に直接物質を送り届ける機能があります。また神経接合部(シナプス)における神経伝達物質の移送(エンドソーム)と、シナプス間隙への放出にもレシチンが利用されます。さらに神経伝達物質アセチルコリンの合成には、レシチンが原料となります。レシチンによるアセチルコリンの合成、エンドソームの形成、内容物の放出と再生というサイクルの活性が低下・障害されるとアルツハイマー病が引き起こされます。

この様にレシチンは単に細胞膜の構成成分としてではなく、物質の細胞間移動による情報伝達など多彩で重要な機能を担っていることが分かります。

 

3.細胞膜の修飾因子

リン脂質二重膜構造自体は油の膜で柔らかく、一定の形を保つことができません。そこにコレステロールやタンパク成分が追加されることで、形態的安定性と強度が得られます。この膜タンパクはチャンネルとして刺激の伝達や物質の移動に関与しています。また細胞膜内に練り込まれたビタミンEやプラズマローゲンなどは、代謝の過程で発生した活性酸素の一次的処理を担います。

また近年大きな注目を集めているのが「糖鎖」です。細胞内で作られる糖の連続した鎖状構造物で、細胞膜タンパク質や分泌タンパク質、リン脂質などは糖鎖と結合し、電子顕微鏡で見る細胞表面は糖鎖の毛玉のように覆われています。

糖鎖の機能としては、タンパク質の機能化・性質変換や情報提示(インデックス)機能、アンテナ機能などの働きがあります。糖鎖なしでは細胞膜やホルモン、酵素などの生体活性が得られず、生存できません。話題に上がる血液型やインフルエンザウイルスのH1N1型などは細胞膜上の糖鎖の提示する情報を表しています。

 

4.酸化とタンパク糖化反応による傷害

疾病や機能異常、老化のメカニズムとして活性酸素による酸化や、糖によるタンパク糖化反応が重大な影響を及ぼしていることが解明されてきました。ミトコンドリアのエネルギー産生に伴い発生する活性酸素はレシチンや脂肪酸、膜タンパク、糖鎖を酸化により変性させ機能を低下させます。同様に蛋白糖化反応によってタンパクの機能が棄損され、さらにAGEsはコラーゲンの変性や細胞内に炎症を起こし細胞死や臓器機能低下による老化や疾患を引き起こします。

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▶続きは、岡治道医師、掲載記事のご紹介⑤「細胞膜栄養療法の実際」

 

投稿者: 予防医学・代替医療振興協会

2019.07.03更新

 

引き続き、ザ・フナイ(2019年6月号)「本物の探究者」特集で紹介された岡治道先生の記事をご紹介させて頂きます。

 

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■栄養学から栄養療法へ

1.栄養と栄養素

栄養(英:nutrition)とは、「生物が外界から物質を摂取し代謝してエネルギーを得、またこれを同化して成長すること。または、その摂取する物質」(出典:広辞苑)と定義され、栄養の源になる物質を栄養素(英:nutrient)といい、身体における役割や機能、更に健康との関係が解明されてきました。

明治以前には「栄養」と「営養」が同じ意味として用いられ、日本栄養学の開祖と称される佐伯矩(さいきただす)博士が1918年(大正7年)、文部省に建言し「栄養」の表記に統一されました。博士は1914年に世界初の栄養学専門研究機関を設立し、1924年に世界初の栄養士養成施設を開設し卒業生を「栄養士」と称しました。1934年(昭和9年)、世界に先駆けて日本栄養学会を設立し栄養学を医学から独立させ、1947年(昭和22年)には国立栄養研究所が設置され「栄養士法」が公布されました。このように、日本は栄養学の先進国として世界に貢献してきたのです。

栄養学とは、「生命の維持及び心身の健康を保つために、栄養の状態や必要度について研究する学問」や「栄養学は食品成分と生体との相互作用に関する科学」などと説明されています。

 

2.栄養療法とは

栄養学による科学的根拠をもとに、治療や養生、健康増進や身体機能の維持・亢進を目的に行われているのが現代の栄養療法です。栄養・生化学辞典には、栄養療法とは「栄養素の補給量を是正して治療効果の改善をはかる療法。絶食(断食)、飢餓や減食(栄養制限)など栄養素の摂取量を制限する方法。不足している栄養素を補充する方法。および例えば特定のビタミンなどを所要量以上に供給する方法などがある」と記されていますが、この中には高カロリー輸液・経腸栄養、疾病に合わせて特定栄養素や食材を付加あるいは除去した食事、メガビタミン療法、分子整合栄養医学理論に基づく栄養素の補充療法、断食療法などの様々な取り組みが含まれています。

従って栄養療法を行う場合には「何を目的とし」、「どの様な効果を期待して」、「いかなるアプローチを行うか」を、理論的背景を理解して選択する必要があります。

 

3.栄養学の発展と歴史

ここで人類と栄養の歴史を再確認しておきます。健康と食事の関係は古く、5千年以上前の古代メソポタミア時代の、健康状態に合わせた楔文字のレシピ集が残っています。古代エジプトではニンニク、胡麻、ヨーグルトなどを健康維持や強壮目的に使用し、紀元前200年頃の「神農本草経(しんのうほんぞうきょう)」には植物・動物・鉱物の人体に作用する効果の強さや使用法が記載されています。

そして栄養への科学的アプローチの始まりは、フランス革命前の1773年、アントワーヌ・ラヴォアジエ(近代科学の父、生理学の始祖)の呼吸の発見であるといわれています。1814年脂肪が発見され、1820年から1941年までに必須アミノ酸9種類が同定されました。1842年にユストゥス・リービッヒが糖、脂質、タンパク質を三大栄養素と命名しました。

栄養素がどの様に働くのかを研究したのがクロード・ベルナールで、1865年に出版された「実践医学序論」の中で、摂取された栄養素の一連の科学的変化を「代謝」と命名しました。このほかにも自律神経と糖代謝、消化吸収の機能、神経毒の作用などを解明し、「生理学・栄養学分野のモーツァルト」と呼ばれていますが、彼の「医学は科学的考察に基づかなくてはならない」と提言したことは、後の近代医学の礎となる提言で、医療に関わるものは常に教訓として心すべきものです。

さて、1912年にフレデリック・ホプキンスが三大栄養素のみでは生命の維持は不可能で、食品には未知の重要な微量栄養素が含まれているとし、これが後にビタミンと呼ばれます。当時死亡者の多かった脚気の撲滅に期待が寄せられ、ビタミンの研究に各国がしのぎを削っていました。本邦での脚気の被害は甚大で、「江戸わずらい」などとも呼ばれていましたが明治の陸海軍では脚気による死亡者が続出し、日露戦争(1904~1905年)では陸軍参戦総兵員約108万8000人、脚気患者は25万人に達し、戦病死者3万7200余人中脚気による死亡者2万7800余人(約75%)で多くは脚気死によるものだったとされています。戦死者数を脚気死数がしのぐこととなりました。

そして1906年に鈴木梅太郎教授(東京帝国大学農学部)が玄米から抗脚気物質のオリザリンを抽出し脚気の原因究明に成功しました。これが世界初のビタミン抽出(1936年にロバート・ウイリアムズよりVitB1と命名される)となりました。余談ですが、世界に誇るこの偉業は同じ大学の医学部の陰謀により、ノーベル賞の受賞が阻止されたことが、ノーベル財団の資料に残されています。

1906年に始まったビタミンの探求は1912年にビタミンA、1922年にE、D、1928年にCが発見され、その後B2、B6、B3(ナイアシン)、B9(葉酸)、B12、Kが1953年までに同定され、前述の脚気はビタミンB1、壊血病はC、ペラグラはナイアシン(B3)、クル病はD、巨赤芽球性貧血はB12の欠乏で発症することが明らかとなりました。

その後、必須アミノ酸を摂ることにより、食事からたんぱく質を摂取しなくても体内での働きを維持できることが証明され、現在では腸管切除後でも三大栄養素、ビタミン、ミネラル、微量元素の持続点滴(IVH)により、20年以上の生存が可能となっています。これは理想的な健康状態とは言えないながらも、救えなかった命を救命できたという観点から、栄養学は一つの大きな目的を達成したといえます。

その後も、海藻などに含まれる「ミネラル」、野菜や果物に含まれる「フィトケミカル」、「脂肪酸」においては生理活性や重要性が研究され、健康や老化、疾患との関係に関するおびただしい発見がなされています。更には腸内細菌の状態と腸の機能が、身体・精神・免疫機能に影響を及ぼすことが判明し「脳腸相関」と言われるネットワークの存在が注目されています。これは栄養素やエネルギー代謝を超えた、生命内部のネットワークと生物活性物質の関係性という新たな研究分野の幕開けとなっています。

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▶続きは、岡治道医師、掲載記事のご紹介④「細胞膜栄養療法と背景」

 

投稿者: 予防医学・代替医療振興協会

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