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2022.03.16更新

 

今回は、浜松医科大学特命教授・緒方勤氏らが行った、マウスを用いた子宮内低栄養が児に及ぼす影響についての実験をご紹介します。

 

▮妊娠中の母マウスの栄養を半減

これまでは、「胎児発育不全症例の男児は高率に尿道下裂(尿道の形成異常)などの外性器異常を有し、将来的な不妊症リスクが高まる」こと、「胎児期の低栄養環境が成人期の糖尿病、高血圧、メタボリックシンドロームなどに関連する」こと(DOHaD仮説)が報告されていました。

しかし、胎児発育不全から精巣機能障害に至る機序や、精巣機能障害がDOHaDに含まれるか否かは不明でした。

緒方氏らは、妊娠中の母マウスに対して、妊娠6.5日目から栄養摂取量を50%に制限する実験を実施し、栄養制限を受けた母マウスの仔(R-マウス)と通常食で飼育された母マウスの仔(C-マウス)を比較して子宮内低栄養におかれた雄の仔マウスへの影響を検討しました。

 

▮精巣内テストステロン濃度、精子数が有意に低下?

妊娠末期である在胎17.5日の仔マウスを比較したところ、C-マウスに比べR-マウスではステロイドホルモン産生酵素遺伝子の発現量が有意に低下し、関連する精巣内テストステロン濃度も有意に低下していました。

生後6週の仔マウスの比較では、生殖細胞のアポトーシス亢進により、C-マウスに比べR-マウスでは精巣上体内の精子数が有意に減少していました。

これらを踏まえ、緒方氏らは「胎児発育不全から精巣機能障害や男性不妊症に至る機序が明らかになった。また。精巣機能障害がDOHaD仮説に含まれることが示された」と結論し、「日本女性は痩せ願望が強く、子宮内低栄養の頻度が高い。環境因子に起因した児の精巣機能障害を予防するには、妊婦に向けた栄養状態の改善に関する啓発の推進が重要だ」との意向を示しました。

 

***

 

上記にもあるように、日本女性は痩せ願望が高いことで、「妊娠・出産で体型を崩したくない」「産後早く元の体型に戻したい」という気持ちから、妊娠中の栄養摂取を過度に調整してしまう方が多くいます。

もちろん、妊娠中の過度な体重増加も、児の将来的な生活習慣病リスクを高めることもあれば、胎児の過成長や膣周囲の脂肪の蓄積により難産のリスクも高めます。

しかし、妊娠中の少ない体重増加(胎児期の低栄養環境)も、胎児の発育に影響を及ぼすだけでなく、冒頭にあるように成人後の糖尿病や高血圧のリスクを高めると言われており、昨年からは「妊娠中の体重増加の目安」も緩和されました。

※妊娠前の体格がふつう(BMI18.5~25未満)で、以前は7~12Kg増加目安だったものが、2021年3月より10~13Kg増加目安に改訂(日本産婦人科学会)

 

今回の研究では、胎児期の低栄養環境が将来的に男性不妊のリスクになることが分かりました。

近年社会問題ともなっている不妊は、女性だけの問題ではなく、男性にも原因の半分があると言われています。

今後新しい世代が不妊問題や生活習慣病リスクから少しでも離れられるよう、親世代から満ちた身体づくりを心掛けていきたいですね。

 

マタニティ

 

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投稿者: 予防医学・代替医療振興協会

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