妊娠中のグルテン摂取過多で児の1型糖尿病リスク増
2019.08.01更新
パンや麺類、お菓子等の小麦製品に含まれるタンパク質「グルテン」について、腸管機能や神経機能に与える様々な影響が懸念されていますが、近年では健康な方でもグルテンの不耐性の検査を受けたり、食生活で小麦製品の摂り方に気を付ける方が増えてきました。
今回は、昨年にデンマーク・バルトリン研究所のKnud Josefsen氏らによって報告された、妊娠中のグルテン摂取と子どもの1型糖尿病リスクの関係についての研究をご紹介します。
この研究では、1996~2002年にデンマークの全国出生コホートに登録された妊婦6万3,529人(妊娠は6万7,565件)とその子どもを、2016年まで平均で15.6年間追跡調査しました。そして妊婦のグルテン摂取量を妊娠25週の時点で実施した食物摂取頻度調査票の結果から評価したところ、妊娠中にグルテン含有量の高い食品を多く摂取すると、生まれた子どもが1型糖尿病を発症するリスクが上昇する可能性があることが明らかになりました。
結果の要約は以下の通りとなります。
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■妊婦のグルテン摂取量は1日当たり平均13.0gであった。
■追跡期間中に247人の子どもが1型糖尿病を発症した。解析の結果、妊娠中の母親のグルテン摂取量が多いほど子どもの1型糖尿病リスクは増加することが分かった。母親のグルテン摂取量が1日に10g増えるごとに、子どもの1型糖尿病リスクは1.31倍に増加した。また、母親のグルテン摂取量が1日20g以上と最も多かった群では、1日7g未満と最も少なかった群に比べて、子どもの1型糖尿病リスクは2倍であった。尚、この研究は、母親の妊娠時年齢やBMI、総摂取カロリー、喫煙の有無など、潜在的に影響を及ぼす種々の因子を調整して解析している。
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これらの結果を踏まえて、Josefsen氏は「妊娠中の食生活を少し変えるだけで、子どもの1型糖尿病リスクを低減できる可能性が示唆された」と述べています。ただ、観察研究であるため因果関係が証明されたわけではなく、今後さらに検討を重ねる必要があると強調しています。
また、付随論説の著者の一人でフィンランド国立健康福祉研究所のMaija Miettinen氏は、母親が妊娠中にグルテンを多く含む食品を摂取する習慣があれば、子どもにもこうした食品を食べさせている可能性があるため、「母親のグルテン摂取と子どもの1型糖尿病リスクとの関連が、母親の胎内にいるうちにグルテンに曝露した結果なのか、幼少期の食生活の結果であるのか、あるいはその双方が関連しているのかは明らかになっていない」と付け加えています。
参考・引用:Care Net「妊娠中のグルテン摂取過多で児の1型糖尿病リスク増」/LINKDEDIET「妊娠中の高グルテン食は子供の糖尿病リスクの上昇につながる!?」
グルテンと子どもの発達についてはまだ研究段階で明らかになってないことも多いですが、栄養療法を取り組んでいる医療機関では子どもの発達障害やアレルギー、代謝異常等がグルテン摂取量を調整することで改善した例は多く挙げられています。
1型糖尿病との関連についてもこれから益々研究が進み、症例も多く得られるようになるかと思いますが、これまで予防が難しいとされていた1型糖尿病が防げる時代がくるかもしれませんね。
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